研究課題/領域番号 |
26370905
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
島田 和高 明治大学, 学術・社会連携部博物館事務室, 専任職員 (70398907)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 後期旧石器時代 / 黒曜石利用 / 中部・関東地方 / 気候変動 / 土地利用 / 黒曜石原産地 |
研究実績の概要 |
目的:2015年度は,2014~15年度にかけて構築した後期旧石器時代の黒曜石利用変遷史と,中部高地黒曜石原産地における環境変遷史との相関をもとに,本研究の中心課題の一つである後期旧石器集団の遊動戦略の変化について解析した. 方法とデータ:後期旧石器時代初頭から終末期(稜柱形細石核)にかけて以下の4期を区分した.1)LGM(最終氷期最盛期)以前:38-30ka,2)LGM初頭:30-25ka,3)LGM寒冷期:25-20ka,4)LGM終末期:20-19ka).以上の年代編成に基づき,Yoshida et al. 2016による中部高地原産地の景観変遷史と気候変動,中部高地の43石器群の旧石器編年と遺跡分布パターン,86,523点の産地分析データによる中部・関東地方の黒曜石利用変遷史を統合した. 結果と考察:LGM以前の中部・関東では中部高地産が最も多用されている.花粉記録は得られていないが,原産地の遺跡分布パターンは明確であり中部高地を経由する広域遊動生活が発達していた.LGM初頭までに中部高地原産地は高山帯となり,遺跡分布パターンは不明瞭であるが中部高地産の利用は途絶しない.原産地での行動は寒冷化の影響で短時間の獲得活動に制限された.20kaまでに中部高地では一貫して寒冷・乾燥化が進むが,LGM寒冷期に中部高地開発は最盛期を迎え,非森林域への積極的な文化的適応が発揮されている.LGM終末期には再び中部高地の遺跡分布パターンが不明瞭になる.小形黒曜石利用への変化および中部高地産と神津島産への利用黒曜石の二極化を伴う遊動領域の再編成に起因する. LGM環境は人間行動を規制するだけではなく,積極的な文化的適応を引き出している.中部高地黒曜石原産地で初めて得られた過去3万年間の花粉記録に基づく景観変遷史に対する黒曜石利用と原産地開発の相関を通時的に復元できたことの意義は大きい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気候寒冷化に伴う遊動戦略については,中部高地黒曜石原産地の景観変遷と土地利用の観点からその変化を復元することができた.本研究については,国際第四紀学連合(INQUA XIX in Nagoya)にて口頭発表を行った.また論文を「第四紀研究」に投稿し掲載された.また2016年5月現在,「Quaternary International」誌に論文を投稿中である.しかしながら,担当業務の重複によるエフォートの組み替えや昨年度予定していた人口動態指標の有効性の検討に時間がかかり,データ収集作業が遅延している.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた人口動態指標の集成ではデータ量が膨大になるため,有意なサンプリング方法について現在検討を行っている.対象地域の縮小も合わせて検討している.2016年度は上述した気候寒冷化と遊動戦略の変化に対する人口動態指標の変化の相関を検討することを目的としているため,可能な限り速やかにデータ収集を実行,完了させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度研究成果の口頭発表を2016年6月1日~3日にイタリア,リパリ島で開催予定のInternational Obsidian Conference in LIpali, Italyで行うための参加費・旅費として充当するため.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年5月現在,International Obsidian Conference in LIpali, Italyへの出張旅費として328,834円の支出手続きを行った.このほかに,現地交通費,参加費の支出を見込んでいる.
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