本研究では,まず8万点以上の黒曜石原産地データを用いて中部・関東地方における後期旧石器時代の黒曜石原産地利用の頻度変化を明らかにした.別の共同研究で得られた中部高地原産地の景観変遷史との年代マッチングにより,原産地の景観変化と先史時代人の黒曜石獲得行動の相関関係を検討した.その結果,3万年前のLGM初頭の気候寒冷化のインパクトで一時的に原産地利用が著しく低下するが,2.5万年前の最寒冷期には文化適応を発揮し高山帯の原産地に積極的に進出したことが判明した.その後2万年前以降の気候改善期にもかかわらず,中部高地と神津島を巡回する中部・関東を二分する移動領域の成立により,中部高地土地利用は低下した.
|