研究課題/領域番号 |
26370907
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
豊島 直博 奈良大学, 文学部, 准教授 (90304287)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 斑鳩 / 古墳 / 寺山古墳群 / 埴輪 / 造り出し / 斑鳩大塚古墳 / 首長系譜 |
研究実績の概要 |
研究2年目の今年度は、平成27年4月から28年2月にかけて、斑鳩大塚古墳の昨年度の発掘調査で出土した遺物と記録類の整理作業を行った。その結果、埴輪には円筒埴輪、朝顔形円筒埴輪、蓋形埴輪があることが判明した。また、周濠の上層からは7世紀前葉頃の須恵器が複数出土し、その頃に周濠が埋没することが明らかになった。これらの成果は一昨年の調査成果と整合的なものである。なお、調査成果は『斑鳩大塚古墳発掘調査報告書Ⅱ』にとりまとめて公表した。 平成27年8月には斑鳩町寺山古墳群の測量調査を実施した。調査は一昨年から継続したもので、今回は3・4号墳を調査し、3号墳が小規模な方墳、4号墳は円墳であることが判明した。その成果は「奈良県斑鳩町寺山3・4号墳測量調査報告書」『文化財学報』第34号に掲載された。 さらに、平成28年3月に斑鳩大塚古墳の発掘調査を実施した。調査区は前方部と想定される墳丘東側と、周濠と想定される墳丘の南側に設定した。まず東側の第8調査区では、墳丘の一部と周濠の一部を確認した。墳丘の東側への張り出し部分は当初の想定ほど大きくはならず、前方部ではなく造り出しの可能性が高まった。つぎに、南側の第9調査区では後世の池によって一部を破壊されていたものの、周濠の南端付近を確認することができた。今後は、造り出しの正確な規模と、現存する墳丘本体の構造を把握する発掘調査が必要となった。これらの調査は平成28年度中に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題は、斑鳩地域をフィールドに古墳時代から古代への転換形態を探ることである。これまでに寺山古墳群の測量調査、斑鳩大塚古墳の2度にわたる発掘調査を行い、前者は古墳時代中期後半~後期前半の初期群集墳、後者は中期前半の造り出し付き円墳である可能性が高まった。斑鳩では前期の駒塚古墳、中期前半の瓦塚古墳群から後期後半の藤ノ木古墳に至るまでの間、首長系譜の動向が不明瞭である。調査の結果、寺山古墳群、斑鳩大塚古墳とも空白期間を埋める古墳であることが判明し、斑鳩の首長系譜をある程度解明することができた。 ただし、本研究では斑鳩大塚古墳の墳丘本体部分の発掘調査、過去の出土遺物の再整理が果たせていない。また、斑鳩にはその他の未調査古墳が複数存在し、さらなる情報収集が必要である。それらの作業は研究の最終年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度は、斑鳩大塚古墳の残存する墳丘本体部分の発掘調査を実施する。調査区は墳丘の東、南、西に設定し、①段築成の有無、②葺石の有無、③埴輪の樹立状況、④盛土の施工方法などの解明を目指す。 また、藤ノ木古墳の西に位置する甲塚古墳の測量調査を実施する。甲塚古墳は立地から、古墳時代後期~終末期の斑鳩を語るうえで重要な古墳と考えられるが、これまで墳丘測量図が作成されたことがない。最新の精度で墳丘測量図を作成し、今後の研究の基礎資料としたい。 斑鳩大塚古墳の過去の出土遺物については、これまですべての遺物の実測図や写真が公開されたことはない。本研究を機会に再整理を行う予定であり、遺物の実測と写真撮影を所蔵者である奈良県立橿原考古学研究所附属博物館において行う。 以上の調査研究をふまえ、総括的な報告書を作成する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
斑鳩大塚古墳の発掘調査を3月末まで延長し、学生への謝金支出が当初の予定よりも遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費は測量調査と発掘調査に使用する消耗品の購入に当てる。旅費は調査成果の学会発表で使用する。人件費・謝金は甲塚古墳の測量調査と斑鳩大塚古墳の発掘調査に使用する。その他の経費は研究成果報告書の印刷費として計上する。
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