研究最終年度の今年度は、8月に奈良県斑鳩町甲塚古墳、亀塚古墳の測量調査を行った。前者は直径約30mの円墳、後者は直径11m以上の円墳であることが判明した。とくに甲塚古墳は古墳時代後期~終末期としては大型で、藤ノ木古墳に後続する首長墳である可能性が高まった。その成果は『文化財学報』第36集で報告した。 2~3月には斑鳩大塚古墳の第4次発掘調査を行った。現存する墳丘の東、南、西に6カ所の調査区を設定した。各調査区で墳丘と周濠を確認した。また、東側の調査区で造り出しと考えられる突出部の隅部を確認した。斑鳩大塚古墳は従来考えられてきた直径35mの円墳ではなく、直径43mの円墳で、東に造り出しをもつ可能性が高まった。なお、西側の調査区は一部を墳丘まで延長したが、墳丘の残存状況は悪く、現在の姿は1954年の調査以降に大きく改変されていることが判明した。周濠からは多くの埴輪と土器が出土した。また、鎌倉時代の柱穴、土坑も確認し、中世に再び土地利用が活発になることが明らかになった。 調査の合間には大学において昨年度の発掘調査で出土した遺物の整理作業を進め、3月に『斑鳩大塚古墳発掘調査報告書Ⅲ』を刊行し、成果を公表した。 斑鳩大塚古墳の墳形や規模が確定したことにより、斑鳩の首長系譜は中期前半に一つの画期を迎えることが判明した。その後、藤ノ木古墳の出現まで首長系譜の空白期間が存在する。斑鳩における首長権力の弱体化が、上宮王家進出の背景にあるという見通しを得るに至った。
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