本研究は現地調査と研究会の開催で構成した。現地調査は当初国内調査と海外調査を同比率で行う予定であったが、海外調査費が予定を上回ったこと、研究会を毎年開催したことから、二年目以降は海外調査に重点を置くことにした。調査と研究会の内容は以下の通りである。 現地調査は国内調査について、宇佐市田染荘石切り場、臼杵市臼杵城下町採石場遺跡ほか各所、埼玉県小川町下里・青山板碑製作遺跡、広島県世羅町万福寺跡周辺採石場遺跡を調査し、軟質石材、硬質石材、片岩のそれぞれ採石場遺跡を踏査した。さらに海外については中国北京雲居寺採石場遺跡、河南省北宋皇帝陵採石場遺跡、浙江省温州市~瑞安市周辺の石造物、韓国慶州南山周辺・仏国寺・益山周辺の石造物、カンボジアシェムリアップ県アンコール遺跡群周辺採石場遺跡ほかを調査した。 これに加えて中国における採石加工技術研究者である北京市中国地質大学、張中倹教授を訪ね、意見交換会を開催した。 研究会については、研究期間中3回「中世採石加工技術研究会」を開催した。平成26年度は埼玉県小川町にて板碑製作遺跡を取り上げて開催、平成27年度は奈良市にて硬質石材採石加工技術と、軟質石材採石加工技術の差異をテーマとして開催した。最終年度にあたる平成28年度は奈良市にて上海華東工科大学の閻愛賓副教授を招聘して、採石加工技術の比較研究をテーマとした国際シンポジウムを開催した。いずれも公開型研究会のため、研究者のみならず一般市民の参加もみられ、盛況であった。
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