平成26、27年度の研究成果を踏まえ、最終年度の平成28年度は成果報告書作成へ向けて、各種分析、研究会、保存処理、写真撮影などを実施した。 ①各種分析は、南郷大東遺跡以外に、十六面・薬王寺遺跡、曽我遺跡、四条遺跡について、ストロンチウム同位体分析、炭素同位体分析、酸素同位体分析を、丸山(研究分担者)、覚張(研究協力者)を中心に実施した。あわせて、十六面・薬王寺遺跡出土の馬骨の放射性炭素年代測定を業者委託した。②研究会は、第2回の研究会を7月2日に「鍛冶と馬具」をテーマに実施し、16名の参加を得た。第3回の研究会は10月29日に2部構成で実施した。第1部は「馬の渡来と農耕」をテーマに実施し、18名が参加した。第2部は「河内の馬文化の源流を探る―日韓中の新視角ー」のテーマで一般公開シンポジウムとし、約100名の参加を得た。③保存処理は、昨年度実施した十六面・薬王寺遺跡、谷遺跡出土品について、奥山(連携研究者)、柳田(研究協力者)を中心に完了させた。④写真撮影は、南郷大東遺跡、十六面・薬王寺遺跡、曽我遺跡、谷遺跡出土品に対して業者委託した。 以上を踏まえて、成果報告書は、奈良県の出土品を中心に、5編の論考と2編の付論を掲載した。また、平成26年度~28年度に実施した一連の研究を通して、従来は馬具や馬形埴輪を中心に語られてきた国家形成期(古墳時代~飛鳥時代)の畿内の馬の飼育と利用について、ウマ遺存体そのものの観察や分析を通して、迫ることができた。特に、幼齢馬の存在や、東日本から連れてこられた馬がいたことなどは、ウマの飼育や利用を考える上で非常に重要な成果となった。
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