本研究では、台湾と朝鮮における植民地政策、地理教育の分析を通じて植民地の人々の帝国日本とアジアに対する空間認識を明らかにすることを目的とした。台湾、朝鮮、日本の地理教科書の分析から、その内容は日本に関する地誌、次いでそれぞれの地域の地誌に重点が置かれた。しかし朝鮮では独立運動(1919年)発生後、民族的自覚を喚起するような郷土教育は避けられ職業訓練に力を入れるなど、台湾・日本とは異なる教育が実施された。 植民地政策、教育、メディアを通じて日本は宗主国としての地位を確立し愛国心の涵養が促されたが、同時に植民地でのナショナリズム興隆の回避も必要であった。地理教育はこうした相矛盾する使命を担った。
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