研究課題/領域番号 |
26370917
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田林 明 筑波大学, 名誉教授 (70092525)
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研究分担者 |
西野 寿章 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40208202)
菊地 俊夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (50169827)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農村地理学 / 農業地域 |
研究実績の概要 |
本研究は日本農業をいかに存続させ成長させるか、それによっていかに農地と国土を保全するかの戦略と、それを実現するための地域的条件を、地域農業の時空間的動態について実証的調査・研究に基づいて明らかにする。主な研究対象地域を首都圏とその周辺の甲信越・南東北などの日本中央部とした。日本中央部の都県の農業振興政策をまとめ、それによって明らかになった存続・成長が見込める農業経営としては、(1)農業を中心に大規模化・施設化・集団化するものと、(2)観光などの他産業を組み入れながら個別に持続していくものに大きく類型化できたことから、平成27年度は、その典型例と考えられる地域の実証的研究を進めた。 菊地と田林は立川市の都市農業について調査結果をまとめ、さらに菊地は群馬県昭和村の企業的野菜栽培について調査結果をまとめた。西野は高崎市の農産物直売所を核とした農業経営の特徴を調査し、その結果をまとめた。さらに田林は菊地とともに、北陸地方において企業的稲作経営と法人化された集落営農による農業の成長・存続戦略を調査し、その結果をまとめた。これらの4つの事例に関する論文はすでにほぼ完成しており、最終的に点検して、平成28年5月初旬に日本地理学会のE-journal Geoに投稿する予定である。このほかに、田林と菊地、西野は共同で、群馬県嬬恋村と長野県川上村の高原野菜栽培の現地調査を実施した。また、田林は茨城県鉾田市の園芸農業について調査し、生産性の高いメロン栽培を中心とした農業経営の存続の理由と地域的条件について明らかにした。これらの事例調査を通して、日本農業が存続・成長するための地域的条件を、経済、社会・文化、政治的側面から分担して検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は主として日本中央部の農村におけるフィールドワークと、文献や統計の分析、そして関係官公庁での情報収集を組み合わせて調査・研究を進めようとするものである。フィールドワークについては、研究代表者と研究分担者が共同で、嬬恋村の高冷地野菜栽培と北陸地方の大規模借地稲作経営の本格的な現地調査を行った。また、それぞれが個人的に、都市農業や首都圏の園芸農業、首都圏外縁部の農産物直売場を核とした農業経営について、昨年度の概括的調査を踏まえて本格的な現地調査を行った。文献と統計の分析については、それぞれのメンバーが個別に進めており、電子メールを利用したり、5回行った研究打合会や日本地理学会学術大会の機会に情報を交換した。これらの結果を日本地理学会をはじめとする学術大会などで口頭発表し、一部は原稿にまとめた。 このようなことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年度であるので、これまでの調査結果の成果を発表するとともに、年度の前半の9月までに、補足調査を行ったり、あらたに事例調査を加えたりする。まず、昨年度に現地調査をした東京都立川市、群馬県昭和村、群馬県高崎市吉井地区、北陸地方(新潟県上越市・富山県入善町・石川県金沢市)に関する4つの論文を、日本地理学会の電子ジャーナルであるE-journal Geoに5月上旬までに投稿する。研究代表者と分担者は共同で、山梨県笛吹市の果樹栽培と宮城県亘理市のイチゴ栽培(震災復興事業)と山形県金山町の中山間農業について新たに調査する予定である。また、個別に研究代表者は千葉県白子町の施設園芸農業、研究分担者の菊地は群馬県長野原町の酪農、西野は群馬県の川場村と嬬恋村、長野県川上村について補足調査を進める。新たに調査して明らかになった点については、適宜学会等で発表する。 事例調査とともに、既存の文献やウェブサイト情報、統計等を参考にしながら、農業の存続・成長戦略の具体的な内容を整理し、さらにそれを実現するための地域的条件を考える。これまで、田林は社会的・文化的条件を菊地は経済的条件、西野は政治的条件を分担して検討してきたが、本年度は共同でそれらの条件を結びつけ、さらには他の条件も考えて、総合的に明らかにする。最終的には、食料生産という農業・農村の本来の機能を軸として、他の機能も活用しながら、どのようにすれば日本農業が存続・成長できるかをまとめる。 それらの結果を、平成29年3月に筑波大学で開催予定の日本地理学会春季学術大会においてシンポジウムを企画し、情報を発信していく。また、調査報告書をまとめる。さらにこの調査報告書に基づいて単行本を発刊することをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、北陸地方を中心に現地調査を実施したが、親類宅に宿泊したため、旅費の支出が予定よりかなり押さえることができた。また、3月に甲府盆地の果樹農業の調査を予定していたが、体調不良で、被調査者と相談して平成28年4月に現地調査を延期することになった。その結果未使用額が生じた。研究分担者の菊地は、主として東京都立川市の都市農業や群馬県昭和村野菜農業地域といった居住地から比較的近い地域を中心に調査を進め、さらに学会や研究打合会も東京が多かったので、予定よりも支出を抑えることができた。研究分担者の西野も群馬県や長野県といった居住地から比較的近い地域の調査に力を入れたため旅費が相対的に少なくてすみ、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であるので、9月頃までの前半を中心に現地での補足調査を実施する。前年度の未使用額を旅費および調査に必要な地図・空中写真等の物品費に充当して、調査の効率をあげるようにする。
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