研究課題/領域番号 |
26370918
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
松村 啓子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (60291291)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 牧草地 / 除染 / 放射線量マップ / 栃木県 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、栃木県北部の那須塩原市および那須町を対象に、①空間線量測定地点の位置情報と、計測値の経時データ、②国による牧草地除染の進捗状況、およぴ除染圃場の位置情報の管理に関する自治体への聞き取り調査を実施し、以下のような成果を得た。 ①那須塩原市・那須町の両自治体は、原発事故発生の3~4か月後より空間放射線量の計測を開始した。ともに山岳部を除く市町域を1kmメッシュで覆い、各メッシュから測定地点を1箇所選定し、空間線量率を地図上の点データ(那須塩原市)やメッシュマップ(那須町)としてホームページ上で公開している。これら放射線量マップは那須塩原市では毎月の計測と地図の更新が行われているのに対し、那須町では年1回の計測と地図の公開にとどまる。なお、計測データは両市町ともにGISにはインポートされておらず、牧草地除染の意思決定にも直接的には利用されていない。 ②平成23~25年度に実施された牧草地の除染は、環境省事業(市町村除染)、農林省事業(公共牧場除染)、東電による損害賠償(自主的除染)の3種類からなり、畜産農家の経営規模、圃場条件、および牧草作付体系により、各々の実施面積が市町村ごとに異なる。那須町では環境省事業による牧草地の除染面積が495.9ha(2010年牧草専用地面積の88.0%)と、那須塩原市の13.26ha(同3.7%)の37倍にのぼる。那須町では作土層の薄い未耕起の永年生牧草地が多く、また機械保有・圃場条件の点から自主的除染が難しい農家が市町村除染を希望したのに対し、那須塩原市では単年生のイタリアンライグラスの作付が優勢であり、比較的規模の大きな畜産経営が国の除染事業を待たず牧草地の反転耕を自ら実施した例が多数にのぼった。市町村除染を実施した牧草地の位置情報は、那須町ではGIS上で管理している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画において、自治体が計測した空間放射線量率データおよび除染実施圃場の位置情報を入手し、除染必要度の高い牧草地と実際の除染実施圃場との整合性を検証する予定であったが、実際に入手可能であるのは那須塩原市の空間放射線量率の経時データのみであり、除染実施圃場の位置情報は未入手である。自治体への聞き取りから、後者はプライバシー保護の観点から入手困難であることが予想される。また、自主的除染については実施戸数・面積も自治体では把握しておらず、現在のところ不明である。 27年度はこれら未入手のデータの収集に向けて引き続き努力するとともに、事例農業集落における聞き取り調査やアンケート調査による除染実施の把握に切り換えることも検討する。 また、除染前の2011年夏季~2012年夏季の空中写真が入手できておらず、こちらについても土地利用調査の実施に向けて準備を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、土地利用調査および畜産経営に対する聞き取りを行う対象地区を、那須塩原市または那須町の農業集落単位で1箇所以上選定する。選定条件は、原発事故後の空間線量率が最高で0.50μSv/h以上を計測した地点が含まれること、家畜飼養密度が相対的に高いこと、市町村除染ないし自主的除染が完了した地域であることである。対象地区の除染前の土地利用は空中写真から判読し、除染完了後の土地利用については、現地調査より明らかにする。 農家への聞き取り項目は、(1)原発事故前と、調査日時点での飼料作物作付面積の変化、(2)栽培牧草が利用自粛となった2011~2012年の飼料外部調達の実態、(3)放射能汚染による公共牧場利用および稲ワラの広域調達の変更、(4)除染対象圃場と除染方法などである。また、農家の許可を得て、除染後の飼料圃場の空間線量率をガイガーメーターで計測する。
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次年度使用額が生じた理由 |
土地利用調査・農家調査の対象地域を未選定であり、当該地域の空中写真を27年度に購入することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
空中写真の購入に使用する。
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