研究課題/領域番号 |
26370920
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
西原 純 静岡大学, 情報学研究科, 教授 (30136626)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 平成の大合併 / 調査の方式 / 人口増減 / 拠点集落 / 集約型居住 / ソーシャルキャピタル / 集落移転 |
研究実績の概要 |
H26年度は3カ年の本プロジェクト期間のうちの1年目にあたる。研究課題は、(1):行政組織配置(庁舎の方式)と人口変化との因果関係の解明、(2):周辺地区での支所行政機能と社会関係資本を活用して、周辺地区旧役場集落の持続可能な集落への進化は可能か、(3):広域自治体周辺地区における集落移転の可能性、である。 (1)に関して、分析結果の完璧性をめざし、当初の予定を変更して行政組織配置データの再作成作業を行った。すなわち557合併自治体について、合併スタート時・2009年度・2014年度」時点での庁舎の方式・本庁地区・支所地区の再調査、再検討を行った。そして557自治体の本庁・支所ごとの人口増減率を改めて算出し、庁舎の方式ごと、本庁・支所地区ごとの大きな差を明らかにした。 (2)に関して、超広域合併自治体・浜松市のうち中山間地域をなす天竜区をとりあげて、天竜区役所へのインタビュー調査、4カ所の協働センターのアンケート調査、さらに天竜区自治会から50自治会を選びして、自治会長についてアンケート調査を実施した(44自治会回答)。さらに天竜区203地区(大字単位)について、生活関連サービス19種類の立地状況を調査した。そして、これらの立地状況から、203地区を拠点地区、準拠点地区、拠点型共生地区、隣接型共生地区、周辺地区という5地区に分類した。その結果、拠点地区・準拠点地区に居住する人口は、天竜区人口の約10%に止まっていることが明らかにした。 (3)に関して、総務省:過疎地域集落再編整備事業について資料調査した。そして、浜松市・飯田市に対して「集落移転」「集約型居住」政策についてインタビュー調査を実施した。 また2014年度日本地理学会富山大会公開シンポジウム『平成の大合併の総括と合併自治体の新しい動き』の主オーガナイザーを務め、富山市長の基調講演なども行って大きな成果をあげた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題(1)に関して、上に記したように、行政組織配置(庁舎の方式)と人口変化との因果関係の解明のための重回帰分析をまだ実施していないが、年度達成度を80%と評価した。その理由は、著書2編(分担執筆。うち1編は英語の書籍として出版)、学会発表2件(国内学会での特別発表、国際会議での発表)を行い、海外にも発信した大きな成果をあげることができたからである。 課題(2)に関して、浜松市を対象地域として成果の一部を著書1編(分担執筆。英語の書籍として出版)した。また、浜松市天竜区についての集約型居住の可能性について、実際の生活関連施設の立地からみた地区の5類型、実際の住民の購買行動との照らし合わせ作業、さらには自治会長へのアンケート調査によるソーシャルキャピタルの実情把握も達成できたので、「浜松市を対象とした調査研究」という枠に限るとH26年度計画を上回り150%を達成できたと自負している。 課題(3)に関して、総務省の集落移転事業を調査するという作業は達成できたが、実施件数が5件に止まっており、総務省事業についての調査についてはH27年度以降の計画を変更せざるを得ないこととなった。市町村レベルでは、浜松市・飯田市を取り上げたインタビュー調査を実施でき、「旧役場集落への集約型居住を目指した政策の実施(浜松市)」「地域振興住宅を活用した来住者の誘致(飯田市)」という自治体独自の政策についての結果が得られた。元々の計画の達成度は80%である。 さらに上述のように、富山市長の基調講演を含む2014年度日本地理学会富山大会公開シンポジウム『平成の大合併の総括と合併自治体の新しい動き』の主オーガナイザーを務めたことは特筆に値すると自負している。この成果は、日本地理学会の電子ジャーナルでも詳しく報告していて、成果の社会的発信も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
課題(1)に関して、さらに557合併自治体の「合併スタート時」「2009年度」「2014年度」時点での行政組織の踏み込んだ再調査をさらに進め、成果の完璧さを目指す。合わせて、重回帰分析を行うため、地域データの収集をH26年度に引き続き続ける。 課題(2)に関して、H26年度に行った浜松市天竜区に位置する44自治会会長アンケート調査データの結果分析を、H27年度に実施する予定である。 課題(3)に関して、H27年度以降は集落移転計画とともに、各自治体が実施している集約居住施策、コンパクトシティ実現のための家屋移転補助事業をとりあげて、合併自治体を対象として調査する。 また課題(2)・課題(3)について、調査研究の成果を、H27年5月の東北地理学会春季学術大会と、同年8月のInternational Geogpraphical Union:Urban Commission Dublin Annual Meeting(発表についての採択決定)にて、成果発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度の所要額(直接費)1,400,000円のうち、次年度使用額は8,280円となっており、その割合は0.6%である。この少額ではあるが次年度使用額が生じた理由は、H27年3月に予定していた資料整理補助作業の従事者が体調を崩して、計画と比べて約9時間分の作業できなくなったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の9時間分の資料整理作業分の金額は、H27年度に早めに作業する所存である。
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