本年度は,3年間の研究期間のまとめとなる学会発表を8月に行うとともに,国内外で補足的な資料収集を行い,論文化の準備を進めた。前者については,8月に北京で開催された第33回国際地理学会議において,"Opening Geography to the General Public: Towards a Genealogy of the International Geographical Exhibitions in Europe (1871-1902)"という題目で発表した。そこでは,1871年のアントワープにおける第1回国際地理学会議に付随する地理学展覧会から,1902年のアントワープにおける地図・民族・海洋博覧会に至る地理学展覧会の系譜をたどる中で,博覧会の会場を中心とする公共空間と地理学の思想・実践が,どのような時空間的変異の中でいかに偶有的に接合してきたのかを論じた。従来顧みられなかった地理学史の新たな側面に光を当てるものであり,国際的にみても注目される内容になったと信ずる。後者については,日本国内の他,ドイツ・ベルギー・イギリスにおいて,各地で開催された地理学展覧会等についての資料収集を行った。なお,今回の科研費(基盤C)に基づく研究を進めるなかで,新たに,公共空間は,地理学と国際主義との偶有的な接合が様々な形で表出する場でもあることがわかってきた。幸い,「近世・近代における地理学と国際主義の接合とその意義」という研究テーマが平成29年度~31年度の科研費(基盤C)に採択され,今回の研究をより発展させるための機会が与えられたので,今後,研究の一層の深化に向けて努力してゆきたい。
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