本研究は,四国を中心に,地方に本拠をおく中小企業の中で特に産業の牽引役を果たすリーディング企業に着目し,海外事業と地場を関係づけて当該企業の特徴を明らかにすることを目的とした。まず,日本における中小企業の置かれた現況を確認した上で,四国に本拠をおき,国内あるいは海外市場で高いシェアを誇る企業(群)を抽出し,聞き取り調査を中心として現地調査を実施した。具体的な事例として,香川県東かがわ地域に展開する手袋関連企業(群),愛媛県今治地域に展開するタオル関連企業(群),そして香川県に本拠をおき国内外で高い市場シェアをもつリーディング企業(群)を取り上げた。特に,第1の手袋関連企業(群)については,リーディング企業3社を対象として,それらの海外展開先であるフィリピン,ベトナム,カンボジアにおいて現地調査(聞き取り調査)を実施した。 研究結果として,以下の点が明らかとなった。まず,大企業中心であった海外展開が中小企業にも着実に広がりつつあること,そして国内企業の海外展開は必ずしも産業空洞化を招くわけではなく,むしろ国際業務の増加が国内本社を中心に人員増や業務増につながっていること,中小企業の海外展開においては,地場産地や地域経済におけるリーディング企業の果たす役割が大きいこと,したがってそれらリーディング企業の存在と発展が地域経済にとって重要であること,これら諸点を結論として指摘できる。また,国内本社と海外展開先との関係については,垂直かつ水平的な柔軟な経営体制が志向されていること,企業群の立地に関しては,人的なつながりであるパイプラインの構築と関係企業・機関同士の地場空間の共有(Buzz)が重要であることが指摘できる。 上記の研究結果は,2015年8月の国際地理学連合(IGU)モスクワ大会,2017年3月の日本地理学会春季学術大会(筑波大)などで発表した。
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