研究課題/領域番号 |
26370928
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤塚 吉浩 大阪市立大学, 大学院創造都市研究科, 教授 (70274347)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジェントリフィケーション / 旧社会主義都市 / ベルリン東部 / 改装された住宅 |
研究実績の概要 |
2014年度は、旧社会主義都市であるベルリン東部を対象に、小地域統計を用いて近年の都市再生動向を分析した上で、現地調査を行い、主に次の3点の研究成果を得た。 まず、1990年代の旧社会主義都市における都市再生には、社会主義から資本主義への転換後、旧社会主義政府が没収した資産の、所有者および所有者の子孫への返還の影響の大きいことが明らかになった。資産の所有者とその子孫には、その地を離れている者も多く、外国へ移住した者も少なくなく、資産返還後には不在地主となった。資産を転売したり、修復したりして、より高い賃料収入を得ようとする者もあった。ベルリン東部のプレンツラウアーベルクでは、19世紀末に建てられた歴史的建築物が多く、老朽化した建物の修復には補助があった。 次に、2000年代半ば以降、ジェントリフィケーションの変化してきたことが明らかになった。2007年から2013年までの小地域統計を分析すると、ミッテの東部とプレンツラウアーベルクと、フリードリヒスハインにおいて人口増加が顕著である。フリードリヒスハインでは、大通りに面した旧社会主義体制下で整備された共同住宅の地区よりも、老朽化した共同住宅の多いところで人口は増加しており、それは老朽化した共同住宅の修復と、新築の共同住宅が供給されたためである。 さらに、ジェントリフィケーションの社会的影響についても調査した。修復された共同住宅では、テラスやバスコニー、エレベータを備えたことが付加価値となり、住宅の価格を押し上げた。高価な住宅が増える一方で、アフォーダブルな住宅の供給はたいへん少なくなっている。新築の共同住宅のなかには、他国のデザインを模して建てられたものもあり、地区の歴史的景観の保全に悪影響を及ぼすおそれがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベルリン東部における都市再生について現地調査を行うとともに、日本地理学会春季学術大会において成果の一部を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の2年度は、チェコのプラハとハンガリーのブダペストを対象に現地調査を行う。2015年度は、旧社会主義都市と先進資本主義都市におけるジェントリフィケーションの差異について、モスクワで開かれるIGU Regeional Conferenceにおいて報告する予定である。
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