研究課題/領域番号 |
26370930
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
浅妻 裕 北海学園大学, 経済学部, 教授 (70347748)
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研究分担者 |
福田 友子 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (40584850)
岡本 勝規 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80311009)
外川 健一 熊本大学, 法学部, 教授 (90264118)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中古車輸出 / 寡占 / 国際リユース / グローバル市場 / 中古部品流通 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度に引き続き、関東圏、関西圏の移民企業家やその関連企業を対象とした国内調査を実施した。今年度は初めて茨城県における調査を実施した。自動車解体業者の立地件数はその登録件数名簿から把握できるが、名簿上、近年相当新規参入業者が多い。まず歴史については、1970年代後半にフィリピン人が来訪したのが最初である。その後は千葉などと同様に、タイやマレーシアの企業家が参入し、さらに遅れてパキスタン等の南アジア系企業家が参入したことが判明した。茨城ではロシア人企業家は一過性のものであり、これは関東エリアでは共通してみられる傾向である。また全国的な傾向と同様であるが、中古車から中古部品流通へのシフトがみられる。このほか、兵庫県三木市近辺においても中東などからのディーラーの集積地があり、調査を行った(報告は別途予定している)。 中古車輸出市場は寡占化が進みつつあるというのが一般的な理解といってよいが、この状況下、茨城県でも見られたように、中古部品輸出にシフトしているように思われる。やはり中古車輸出は車輌価格の仕入れ・販売価格の変動でビジネスが大きなダメージを受ける傾向がありリスクが高い。一方、中古部品の場合は、許可というハードルはあるものの、中古部品の生産プロセスで仕入れや販売価格の変動を吸収することができる。移民企業家の中でもこのリスクを避ける傾向があるといえよう。 今年度はこのような現地調査の他、本研究の成果の一部を掲載する書籍『国際リユースとグローバル市場』(主として流通面に関する考察)の執筆に大部分を費やした(2017年5月中に刊行予定)。国際リユースの重要な一端を移民企業家が担っていることを明らかにした。また、その中の一章で、移民企業家もかかわりながら行われている中古部品輸出のビジネスモデルをパターン化したことも重要な成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共同研究者の協力もあり、多くの老舗企業や移民企業家へのヒアリングを行うことができた。地理的・民族的に更なる広がりをもった定性的データが相当蓄積された。また、GISを用いることで、他の静脈産業との比較分析を行える体制を構築した。海外調査はマレーシアやミャンマーで実施し、本研究のテーマに即したデータを多く収集することができた。移民企業家が担うビジネスの国内・国際流通についてはほぼ整理がなされてはいるが、立地体系に関する整理、検討がまだ不十分である。上記の書籍の執筆により、主として流通側面の整理に注力したためである。
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今後の研究の推進方策 |
3点に分けて研究を進める。一つは、国内の立地に関する研究である。これまでの調査研究過程から、国内出身者(主として日本人)のリサイクルビジネスの場合、廃車発生地(自動車保有台数に近い)に依存して立地する傾向があるが、移民企業家の立地の場合は、よりネットワーク、つまり中古品特有の流通上の課題をクリアすることを重視して近接して立地する傾向が強いことが調査データなどから推測される。これを既存の集積論とリンクさせて究明する。 2点目は各国でみられる特定エスニックグループによる地域的集積の背景である。これまでの研究から、シャルジャがパシュトゥン・ハザラ(一部パンジャビー)、バンコクは古くから華人が担い、近年はタイ系諸族、ヤンゴンではムスリム・インド系移民、ダルエスサラームではザンジバル、といったような状況がわかっている。日本から同族企業が輸入しているような場合(タイ、マレーシア、シャルジャが該当する)は、エスニックネットワークが情報の非対称性に対する担保として機能しているが、ヤンゴンをはじめとしたローカル流通に特化した地域では、エスニックネットワークは限定的にしか機能していない。このようにグローバル流通とローカル流通で地域的集積の背景が異なっており、これを整理する必要がある。 3点目はこのビジネスで進みつつある部品の規格化が移民企業家の流通や立地にどのように影響しているのかを究明する。日本からの輸出の場合は主として日系企業がそのような取り組みを行っている。これはこのビジネス全体の態様を変えてしまうのか、あるいはいわば「別の市場」として区分されるだけなのか、この点を実態を踏まえながら考察したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内調査を精力的に行ってきたが、学内業務等の事情で、予定していたよりも十分な日程をこなすことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度十分に実施できなかった地域調査(北陸地域など)に充当する。
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