研究課題/領域番号 |
26370931
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
土屋 純 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (80345868)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 買い物困難地域 / 買い物弱者 / GIS / 移動販売車 / 地域商業の再生 |
研究実績の概要 |
今年度は、GISを用いて買い物困難地域の分析を行った。2014年度の商業統計調査のメッシュデータが入力できていないことから2007年度までの分析となるが、2000年代にかけて買い物困難地域が拡大していることが明らかになった。特に東北地方では、都市からの隔絶地域において高齢化が進んでおり、買い物困難地域が拡大していることが明らかになった。 加えて、今年度は東日本大震災後における地域商業の再生について陸前高田市、大船渡市などの三陸地方を事例に調査を継続させた。特に、いわて生協、みやぎ生協における移動販売車による買い物弱者向けの流通システムについて調査した。仮設住宅や沿岸の住宅地において移動販売車が2012年度より運行し、高齢者を中心とした買い物弱者支援となっている。しかし、2014年、2015年になるに従って、スーパーなどの商業施設の新規立地と、それらの施設による送迎サービスの充実によって顧客が奪われ、売上高が減少していることも分析した。このような買い物弱者支援の1つの方法である移動販売について、運営上の工夫によって採算性を確保しているコープさっぽろによる移送販売事業についても調査し、被災地の事業との比較検討をおこなった。コープさっぽろでは、2015年段階で75台もの移動販売車が運行し、農山村地域を中心として後期高齢者の貴重な買い物先になっている。その採算性は、顧客とのきめ細かいコミュニケーションと、移動コストを考慮した販売ルートの選定にあることを明らかにした。このような過疎地や被災地に多く存在する買い物弱者に対して、どのようなシステムが必要なのか、移動販売車を事例として検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、東北地方と中国地方を比較し、①GISの分析による買い物困難地域の抽出と、②買い物弱者の買い物実態調査を行う予定であるが、現在のところ中国地方における分析が不十分な状況となっている。買い物実態調査についても、移動販売車による供給システムの調査にとどまっており、買い物弱者の実態把握が進んでいない。買い物困難地域における買い物弱者の実態調査を行わなければ、買い物弱者への支援策を具体的に検討できないと考える。今のところ東北地方の実態調査がメインとなっているが、北海道の買い物弱者支援の具体的な方法について調査することができており、比較検討できていることは当初の計画とは異なる点であり、今研究の1つの成果であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、東北地方における買い物弱者の実態調査を行わなければならない。早急に対象地域の選定と調査実施計画を明確にし、現場との交渉を進めて調査に踏み切りたいと考える。中国地方における詳細な調査が行えておらず、東北地方と中国地方との比較研究は、今年度において実施することが困難な状況となっている。そこで、中国地方での調査については今後の課題とし、2015年度に実施した北海道での買い物弱者支援事業調査のように、様々な支援策を聞き取りを中心に調査することによって、実践的に使える様々な支援策を体系化することができると考える。全国の様々な事例について出張による調査を実施していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度商業統計調査・メッシュ統計を入手できていないため。加えて、中国地方における調査のための出張が十分に行うことができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2014年度商業統計表メッシュデータ・東北地方、中国地方、北海道、の3つを購入する。そのことによって、2000年代から2010年代にかけての買い物困難地域の拡大状況について分析することができる。加えて、買い物弱者の実態調査のための資金としたい。アンケート調査を実施することができると考える。
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