研究実績の概要 |
本年度は、北海道で行われている移動販売車に対する調査、津波被災地における地域商業維持に関する調査、の2点を実施した。 まず、北海道の移動販売車の実態について、コープさっぽろが運営している夕張市の事例を調査した。炭田が閉山してから人口減少が進み、高齢化も進んだ結果、年金生活者を中心とした地域社会となっている。そこでコープさっぽろは、唯一市内に残された生協店舗を起点として、夕張市内を巡回する移動販売車を運行し、高齢者を中心とした買い物弱者支援を行っている。客単価は3,000円を超え、移動販売車に依存している顧客も多く、移動販売車の事業は十分な採算性を維持している。しかし、さらなる人口減少で店舗の維持が不可能になった場合、移動販売車の起点を失うことになるので、将来的に維持できるのかは不透明な状況である。 東日本大震災の津波被災地である宮城県名取市閖上地区を事例に、地域商業の再生の可能性について検討し、地域住民、特に高齢者にとって馴染みのある商店がどのように維持されているのか、仮設店舗を事例に検討した。津波被災後、地域の商店の多くは廃業しているが、一部の商店が名取市内の仮設商店街での営業を継続している。本研究ではそうした商店に聞き取り調査を実施し、①震災後の営業再開、現在までの営業状況、②震災前の客である地域住民との関係性、③仮設商店がでの営業であたらに取り組んでいること、について情報を収集した。その結果、将来的に閖上地区で経営を再開するために地域住民とのつながりを重視していること、現在の営業を維持するために震災前とは異なる営業を実施して経営基盤の強化も進めていること、などを明らかにすることができた。そして、閖上地区の地域住民は仮設住宅等で生活しているが、高齢者のなかには仮設商店街に定期的に通って、地域商店とのつながりを維持しているケースも見られることが明らかになった。
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