国内における高い失業率対策と外貨獲得の必要性から,フィリピン政府は国民の海外就労を促進してきた.同時にそれは,将来的な国家運営を担うことを期待された若手頭脳の流出にもつながった.かつて,国内の低賃金や治安に対する懸念を理由に,一度海外での就労機会を得た若手頭脳は海外での生活の継続を望む傾向が強かった.しかし本研究では,人々の意識の変化や自国で生活することを望む者が多くなっているとの結果が得られた.そこには,自国の文化や価値規範に対する再評価,経済のグローバル化に伴う外資および多国籍企業の進出,ドゥテルテ政権下での治安の安定などによる生活環境の改善などが影響していることが明らかになった.
|