研究課題/領域番号 |
26370934
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
藤田 佳久 愛知大学, 公私立大学の部局等, その他 (70068823)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新修支那省別全誌 / 中国辺境地域 / 中国地理 / 東亜同文書院 / 東亜同文会 / 中国大調査旅行 / 中国省別地誌 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度対象とした東亜同文会刊行「支那省別全誌」全18巻の刊行ののち20年後に刊行された「新修支那省別全誌」9巻を対象にし、そこに描かれた地域像、省の内外との関係、前シリーズの「支那省別全誌」との比較による地域のダイナミクスを明らかにしようとした。 本年度対象とした「新修支那省別全誌」は民国政府下での省の新設もあり、当初総巻数は23巻が予定され、昭和16年8月に四川省(上、下2巻)から刊行され始めたが、日中戦争・太平洋戦争の激化により、第9巻目の刊行で刊行計画が崩れた。準備中の原稿は戦火で失われた悲劇もあったが、第9巻目の「青海・西康省」は物資不足の中、敗戦直後の昭和21年9月に刊行され、貴重な財産となった。 新シリーズ9巻は、四川省2巻、雲南省1巻、貴州省2巻、映西省1巻、甘肅省1巻、新疆省1巻、青海・西康省1巻の構成となっており、前シリーズで必ずしも十分でなかった辺境地域から刊行されたことがわかる。とくに前シリーズで付属的であった新疆省や青海・西康省はほぼ独立巻にしたほか、四川と貴州両省を増刊して上、下2冊ずつの刊行にするなど、各省への力の入れ方がわかる。これは前シリーズから20年経過した中でのデータ集積とフィールドワークの集積を物語っている。 そのような経過の中で、新修シリーズは中国の辺境地域中心となったが、民国期における経済発展と改革開放後の中国が行った西部大開発の原形的開発計画がみられ、また鉄道網の整備や航路開発により、黄河経済圏、長江経済圏の萌芽、西域ではソ連とのネットワーク化が進行するなど、辺境とはいえ、地域がそれによりダイナミクスの波に入ろうとする状況がうかがわれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「新修支那省別全誌」9巻は、戦争の影響を受け、計画の半ばで頓挫したが、結果的に中国メインランドではなく、辺境地域が中心となったため、辺境地域という共通基盤から解読、分析することができる。このことは辺境地域を通してメインランドを見ることも可能であり、そこに今日の中国の辺境地域を理解する視点とメインランドとのつながりの視点という2点から検討できるという点に焦点を絞ることができそうであるからである。
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今後の研究の推進方策 |
1つは、上述のように「新修支那省別全誌」については、辺境地域としての特性とそのシステム、またメインランドとのかかわりの中で、メインランドとのかかわりを明らかにし、全体としての近代中国のまとまりのレベルを検討したい。 2つは、前シリーズ「支那省別全誌」との比較の中で、前シリーズの地域類型と、「新修支那省別全誌」の各省との対応関係を検討し、両シリーズの中に共通する省について、時期別比較を通して地域の変動と伝統性を明らかにし、あわせて「新修支那省別全誌」で新たに導入された項目の意味についても検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
少し繰り越し分が発生したが、途中で不足分が発生しそうな状況であったため、それを抑制したこと、また謝金部分が作業の自前化もあって少し削減されたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は謝金部分が確実であり、予定通りの使用を見込んでいる。
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