本研究は、1901年上海に開学した東亜同文書院の学生たちが行った「大調査旅行」の調査記録をベースに、1920年代刊行の『支那省別全誌』全18巻と1940年代刊行の『新修支那省別全誌』(9巻目で戦争により未完)を取りあげ、中国の地域構造と地域システムを明らかにしようとした。 その結果、前誌は貿易を軸としはじめた長江沿岸地帯および沿海地帯と、自給経済的な内陸部地帯との2つに類型化でき、一方、後誌は辺境地帯の省が中心で、四川、雲南の2省と他の省に類型化でき、政府の地域開発計画により、貿易都市との経済圏形成が芽生え、貿易を通しての近代化が強弱の地域差はあるものの始動しはじめた姿がわかった。
|