研究課題/領域番号 |
26370936
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
杉浦 真一郎 名城大学, 都市情報学部, 教授 (50324059)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介護保険 / 国民健康保険 / 広域連合 / 一部事務組合 / 広域連携 |
研究実績の概要 |
本研究では,行財政の地域的枠組みをめぐる再検討の一例として,現在のところ市町村が保険者として運営に当たっている国民健康保険(市町村国保)について,平成30年度からの都道府県単位への移行を目前にした広域化への取り組みを検討した。保険料(税)の地域差がしばしば注目される中で,保険財政運営の都道府県単位化に当たって保険料率を統一する方向を目指す地域は非常に少ないが,それらは現在国が進めている広域化の制度が固まる以前からそうした統一化の方向性を打ち出していた。その一例であるN県の場合,平成の大合併もあまり活発でなく,小規模町村も少なくない。県南部での人口減も顕著になっていくと予想される中で,それら町村部などでいかにサービスを維持していくかが問われており,県内市町村の状況を踏まえて,水平垂直方向の補完が必要としている。同県で医療費と保険料との関係を見ると,両者は必ずしもストレートに結びつかない。県内での市町村間の差異も,医療費では1.68倍(H25年度,年齢構成による調整前の値)程度あるが,保険料水準では2.3倍程度の開きを見せている。保険料率を統一することは,現在の個別市町村ごとの保険運営で保険料が低水準である市町村にとっては不都合であると言えるが,一方で,この先,単独での保険運営が本当に持続可能であるのかどうかは各市町村としても考えるのではないかという点を市町村ごとにどう判断するかが問われている。国民健康保険の保険料水準は,統一化の場合も,標準保険料率に基づいて市町村から県への納付金は一定のルールで決まるものの,実際に各市町村の被保険者に対して賦課される最終的な保険料がどうなるのかは,様々な要素によって変動しうる。各市町村の保険料水準に影響するそれら諸要素をいかなる組み合わせで決めるのかをめぐっては,平成28年度以降の協議においても市町村ごとに利害の対立が生じうると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
制度移行期にあたり情勢に流動的な面があり,結果として,都道府県のうち焦点を当てるべき地域が限られていることや,まだ市町村単位での調査が十分に進められているとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
課題最終年度であるため,研究計画全体の中で後半に位置づけていた国民健康保険の運営体制の変化をめぐる協議の行方をにらみながら実際の運営体制で被保険者と直接的な関わりを今後も持ち続けると思われる市町村について広域化の影響などを運営体制および保険料(税)の変化の面から明らかにする取り組みをしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年間で50日程度の宿泊を伴う国内公務出張業務(2年度連続)があけたことで,勤務先での各種管理運営業務および教育に戻ったことから,当初の想定していた計画通りに調査等の日程を組むことが難しかった。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は,5月から調査日程を組むなど,早めの調査・研究を計画および実行するべく準備を進めている。
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