研究課題/領域番号 |
26370938
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研究機関 | 神戸山手大学 |
研究代表者 |
橘 セツ 神戸山手大学, 現代社会学部, 教授 (70441409)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 文化地理学 / 庭園(ガーデン、ガーデニング、園芸) / イギリス(英国) / 国際情報交換 / ライフヒストリー / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究では、ライフヒストリーとジェンダーから近現代の日本と英国の庭園をめぐる思想と実践に地理学的にアプローチする。本研究では、歴史/社会/文化地理学の最新動向の議論を踏まえつつ、文化を越える庭園にも注目して、ジェンダーとライフヒストリーの分析を行う。本研究が対象とする日英の交流する庭園は、次の4種類である:英国の庭園、英国の日本庭園、日本の庭園、日本のイングリッシュガーデン。近現代は日英ともに女性の教育、女性の家庭での役割、女性の社会進出などに共通した方向の変化が捉えられる。本研究ではライフヒストリーで語られる旅行・学校・家庭における庭園の実践のプロセスがジェンダー化することを批判的に明らかにする。さらに庭園の実践の中に現れる社会性・生産性・精神性の価値基準のスケールを組み合わせ考察することで、近現代の各々の世代による庭園の実践に女性と家庭や社会との多様化・複雑化する関係の諸相がどのように現れるか解明する。 これらの研究目的を達成するために3年にわたって次の3つの手順を遂行する。I) 本研究の理論・方法論的基礎となる最新動向を踏まえた研究のレヴューを行う。II) ライフヒストリーとジェンダーの視点から庭園について言語の記述・図像の収集、資料批判、表象・言説の分析を行う。III) 庭園をめぐる実践について日本人と英国人のライフヒストリーを調査する。旅行・学校・家庭における庭園の表象・言説について、社会性、生産性、精神性の観点を組み合わせて分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の主な研究として、①英国のノッティンガム大学を訪問してライフヒストリーとジェンダーの文化地理学の理論・方法論の情報収集と意見交換を行った。②園芸・庭園関係の資料が豊富なロンドンのLindley Library(Royal Horticultural Society)にて資料収集を行った。③ロンドンで活躍するガーデンデザイナーにライフヒストリーにかんするインタヴューを行った。 研究の途中経過の成果発表として、20世紀初期に英国にて日本庭園造園にかかわった女性3人のクロスカルチュラルなライフヒストリーとジェンダーについて考察した英文論文を学会誌に投稿し掲載された( ‘The “Capture” of Exotic Natures: Cross-cultural Knowledge and Japanese Gardening in Early 20th Century Britain’ 『人文地理』66-6, p4-18, 2014)。
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今後の研究の推進方策 |
前述のI)~III)の3つの手順のうち、今後は次のことに焦点を当てて研究を遂行する。 I) 本研究の理論・方法論的基礎となる最新動向を踏まえた研究のレヴューに向けて、引き続き、文献読解と資料収集を行う。II) ライフヒストリーとジェンダーの視点から庭園について言語の記述・図像の収集、資料批判、表象・言説分析については、引き続き、英国と日本にて資料収集を行う。収集した資料について時代に応じた変化について分析を行う。本研究では、近現代を5つに時代区分して庭園の考察を行う:a) 19世紀後半から1930年代まで、b) 1930年代から第2次世界大戦が終了するまで、c) 第2次世界大戦後から1970年代まで、d) 1980年代以降20世紀末、e)21世紀初期。III) 庭園をめぐる実践についての日本人と英国人のライフヒストリー調査に関しては、英国と日本にて、引き続き、調査を行う。ライフヒストリーについての旅行・学校・家庭における庭園の表象・言説について、社会性、生産性、精神性の観点を組み合わせて分析する。 平成27年には、研究成果発表の一部として、ロンドンにて7月に開催される第16回国際歴史地理学者会議The 16th International Conference of Historical Geographersにて、日本のイングリッシュガーデンに関わった現代の日英の女性ガーデンクリエイターたちにも焦点をあてた研究発表を行う(‘Making English Gardens in Japan 1860-2010: ideas, practices and modernity’)。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内でのインタビュー調査を計画していたが、校務の多忙のため時間がとれなかった。次年度以降に、インタビュー調査を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に計画していた国内でのインタビュー調査と資料収集のための旅費として使用する予定である。
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