研究課題/領域番号 |
26370942
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
三浦 武 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (30250898)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 民俗舞踊 / モーションキャプチャ / テキストデータ |
研究実績の概要 |
本研究では、全国で最も多くの重要無形文化財を有している秋田県の民俗舞踊に関して、その起源や歴史、地域社会との関係を分析するために、舞踊時の身体動作を記録したモーションキャプチャデータと、民俗舞踊の調査報告資料のテキストデータの連成解析を可能とする新たな手法の検討を行っている。 平成26年度においては、モーションキャプチャデータ解析法の整理を行い、身体動作のリズム特性抽出法に関して、その度合を自動抽出する手法を確立した。また、テキストデータ解析法の調査を行い、自然言語の構文解析を行い、その結果を多変量解析法の1つである対応分析法によって舞踊と関係の深い単語群の関連性を定量的に図式化する手法も検討した。 平成27年度においては、身体動作の特徴に関して、舞踊動作の空間的・時間的特徴の双方を定量的に数値化することが可能となった。また、テキストデータとして与えられる文書データの解析に関してtemplate analysis法を導入した。これらの手法を用いて民俗舞踊のモーションキャプチャデータを解析したが、対象舞踊数を予定していた3つから7つに増やし、秋田県内の盆踊りの分布をより詳細に把握することに成功した 平成28年度においては、身体動作の特徴量の抽出に関して,舞踊者の体格差の影響を低減化するために,統一した体格を自動的に設定する手法を考案した。舞踊動作の空間的・時間的特徴の双方を定量的に数値化することが可能となった。また、テキストデータとして与えられる文書データのみではなく、過去に行われた民俗文化財に関する緊急調査のデータを活用することを試みた。これにより、秋田県近辺の過去の行政区域の割り当てが、民俗習慣及び民俗舞踊の双方に対して影響を与えている可能性が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度においては、システムの開発と課題の抽出は概ね順調に進展している。まず、モーションキャプチャデータとテキストデータの連成解析については、前年度までの間に完成していたモーションキャプチャデータ解析法およびにテキストデータ解析法に加えて、過去に実施された民俗文化財の緊急調査により得られてきた調査データを活用した解析法も加えることに成功した。この調査データは,65項目の民俗習慣の分布を秋田県内150カ所に渡って調査した結果得られた膨大な量のデータであり、これを用いることにより、前年度実施した各地の郷土史の文献中の文書データ解析により得られた定量的解析結果を裏付け,更にその中では得られていなかった,旧秋田藩に隣接していた旧南部藩(現岩手県)の地域における盆踊り特有の動作と、民俗習慣の関連性に関する新たな知見が得られた。また、秋田県内でも盆踊りが盛んである旧南秋田郡に着目し、特にその地域に関連した文献を集中的に取り扱うことにより、モーションキャプチャデータ解析によって得られたその地域の盆踊りの特徴的なポーズと江戸時代の文献に見られるポーズとの関連性が指摘された。これらの成果は、国内学会2回および学術論文誌掲載の論文(査読有)1編の形で公表された。 上記のように、平成28年度の研究実施により、これまで得られていなかった知見を得ることができたことから、現在までに概ね順調に研究が進展していることがわかる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究が概ね事前に設定した研究計画に沿って順調に進展しているので、今後の研究の推進も、基本的に当初の研究計画に沿った形で進めることとする。 平成29年度には、これまでに取り入れられたモーションキャプチャデータ解析,テキストデータ解析および民俗文化財調査データ解析に関して、その連成をこれまでより自動化された形により発展させることができるかどうかを検討する。現段階では、上記3つの解析結果を自動的に得ることは可能になっており、それらの解析結果をグラフ等の形で可視化することにより、解析者が全体像を容易に把握できるようになっている。今後はこれを更に発展させ、それぞれの解析結果の関連性を自動的に指摘する手法を導入し、解析者がその関連性をより的確に把握することを支援できることを目指す。上記の取り組みにおいて得られた成果を国内学会1回、国際学会1回の発表および学術論文誌掲載の論文(査読有)1編の投稿により発表することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
モーションキャプチャデータとテキストデータの連成解析プログラムの試作をノート型およびデスクトップ型パソコンの双方を使用して実施する予定であったが、平成28年度に実施した民俗文化財調査データ解析に関しては、従来作成したプログラムを用いた既存システムのみの使用で十分な結果が得られたため、デスクトップ型の購入を実施しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、発展版プログラムの実装用としてデスクトップ型パソコンを購入する予定である。また、国内学会については最低2回、国際学会については最低1回移動し、研究成果の発表を実施する。また、学術論文誌への論文1編以上の投稿を目指し、その投稿料にも本予算を使用する。
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