本研究では、全国で最も多くの重要無形文化財を有している秋田県の民俗舞踊に関して、その起源や歴史、地域社会との関係を分析するために、舞踊時の身体動作を記録したモーションキャプチャデータと、民俗舞踊の調査報告資料のテキストデータの連成解析を可能とする新たな手法の検討を行っている。 平成26年度においては、モーションキャプチャデータ解析法の整理を行い、身体動作のリズム特性を定量的に自動抽出する手法を確立した。また、テキストデータ解析法の調査を行い、自然言語の構文解析を行い、対応分析法によって舞踊と関係の深い単語群の関連性を定量的に図式化する手法も検討した。 平成27年度においては、身体動作の特徴に関して、舞踊動作の空間的・時間的特徴の双方を定量的に数値化することが可能となった。また、テキストデータ解析に関してtemplate analysis法を導入した。これらの手法を用いて、秋田県内の盆踊りの分布をより詳細に把握することに成功した 平成28年度においては、身体動作の特徴量抽出に関して,体格差の影響を低減化するために,基準体格を自動的に設定する手法を考案した。また、過去に行われた民俗文化財に関する緊急調査のデータを活用することを試みた。これにより、秋田県近辺の過去の行政区域の割り当てが、民俗習慣及び民俗舞踊の双方に対して影響を与えている可能性が指摘された。 平成29年度においては、より低次元で効率の良い動作特徴量の抽出法を提案した。また、民俗舞踊の伴奏音楽からの特徴量の抽出法を考案し、舞踊動作と伴奏音楽の対応関係について、地域ごとに特有の特徴を抽出した。さらに、解析全体を体系的に実施できるように、民俗舞踊とそれらを伝承してきた各集落およびモーションキャプチャデータの関連性を階層構造モデルとして表す方法も提案し、舞踊の動作特徴の可視化が効率的かつ効果的に可能になることを示した。
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