本研究は、台湾の漢民族社会の民間信仰を事例に、異民族と接触し、あるいは支配された社会的な記憶がいかに生成、伝承、変形されていくのかを、具体的な信仰対象の出現とそれに対する人々の対処、信仰体系や儀礼体系への取り込みといった側面から考察した。台湾は、繰り返し外来政権の統治を受けたが、外来者を信仰対象として組み入れるという事例が少なくない。特に、本研究では、日本人を神に祀るケースを中心として、補足的にオランダ人や中華民国人(蒋介石)を祀る場合も考察した。日本人に関しては研究期間内に40以上の事例を発見し、うちいくつかについては、比較的詳細な聞き取り調査、儀礼への参与観察を行った。
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