研究課題/領域番号 |
26370944
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60230786)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ユーミエン / シャマン / 歌 / 歌唱による儀礼執行 / 女性の儀礼参入 / 新しい宗教現象 / 国際研究者交流 / タイ |
研究実績の概要 |
調査実施日程:平成26年8月5日~24日、9月9日~16日、12月25日~31日、2月14日~23日にタイ王国で調査を行った。調査は1)女性シャマンが執行する儀礼の観察・記録と個々のシャマンに対するインタビュー調査、2)ユーミエンの歌のと詠唱法に関するインタビュー調査を主に行った。 1)女性シャマンが執行する儀礼については、チエンラーイ県HCP村において、陰暦の七月十四日・十五日、と正月初一日~三日に行われた大規模な儀礼を観察・記録し、これまでの同村における儀礼記録と併せて儀礼の過程を分析した。また、女性シャマンのライフヒストリーについてシャマンとなった経緯等を聞き取った。これらによって、女性たちがシャマンになった動機等の情報を蓄積するとともに、シャマン間の師弟関係等、シャマンたちの組織の解明を進めた。これは女性シャマンの出現と増加の要因を探るために肝要である。 このほか、HCPの女性シャマンが村外で個別の要請に応えて行っている治療儀礼の観察記録も行った。女性シャマンの活動範囲がHCP村内にとどまらず、少数ながらもタイ北部のユーミエン村落のかなり広い範囲にわたって活動しており、女性の儀礼参入が広く受け入れられていることが判明した。 2)ユーミエンの歌については、ナーン県NG村とパヤオ県PY村において、歌詞の採録と詠唱法に関する聞き取り調査を行った。ユーミエンの歌には口語とは異なる語彙による「歌謡語」が用いられる。漢字で書かれた歌詞を数件採録し、その一字ごとの発音を記録して、歌謡語の語彙体系の解明を進めた。詠唱法も数種類あり、用法が複雑であるが、歌に詳しい祭司とともに儀礼の映像ビデオを観察して、儀礼で用いられている詠唱法を特定した。これにより、在来の儀礼では用いられない歌が新たな儀礼で用いられる際の応用のかたちが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的は(1)新しい宗教現象における在来儀礼知識の再編と応用の様態を明らかにする、(2)従来、儀礼とは異なる領域を構成していた歌と歌唱の伝承を究明する、(3)この二つの作業を通じて新しい宗教現象が生じた要因を明らかにするといった3項目であった。(1)と(2)に関しては、初年度としては概ね当初に想定した目標を達成している。(1)については、在来儀礼における要素で新しい宗教儀礼に応用されたものをある程度特定することができた。(2)については、歌謡語による歌詞の採録、詠唱法の詳細を聴取し得た。(3)は(1)と(2)の作業の積み重ねを俟たねばならないが、おおよその作業仮説は立てられた。
|
今後の研究の推進方策 |
特に大幅な研究遂行上の変更は無い。初期の予定通り、現地調査を累積していく所存である。一方では新しい儀礼の観察記録とそれに参加しているシャマンの人間関係・組織、および新しい儀礼で用いられている儀礼知識の解明を行い、他方では、歌に関する歌謡語と詠唱法の調査を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
謝金を要する調査事案がなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
未使用額は些少であるので、物品費あるいは旅費の一部として支出する。
|