本研究は、戦後の沖縄本島を事例に、米軍基地周辺の歓楽街の文化的意味を社会的変化の文脈で考察することを目的として、以下の二点を中心に明らかにしてきた。第一に、本研究は、戦後沖縄における米軍基地と都市の劇的な変容に伴う歓楽街の設置・維持・浄化をめぐる複雑な変遷について、米国占領下・復帰後の沖縄社会における売買春の統治・管理状況を踏まえて考察するとともに、現代沖縄における歓楽街の政治的・社会的な意味・機能について文献資料を基に明らかにした(最終2017年度)。第二に、近年、沖縄本島中部の歓楽街において行われた、自治体・警察・市民団体などによる「環境浄化」活動に焦点を当て、歓楽街が「奪取すべき共同体」として位置・意味づけられるなかで、その労働者たちが「被害者」や「外部者」として可視化されつつも、共同体から排除可能な労働主体として見なされ、「浄化」される過程について明らかにした(2014~2016年度)。 また、このような戦後沖縄における軍事基地と都市・歓楽街の変容の関係について個別的・普遍的な文脈において探究するために、アジア・ヨーロッパ・北米地域などにおける歓楽街・売買春・セックスワーク研究・運動関係の研究者・当事者たちとのネットワークを構築できたことは貴重な成果となった。本研究におけるこれらの成果は、脱軍事化過程における市民権・ジェンダー・セクシュアリティ・労働・公共圏の変容やあり方を丁寧に考えていく上で重要な視座になるとともに、今後の脱軍事化研究における基礎研究として位置付けられると思われる。
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