研究課題/領域番号 |
26370946
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松本 尚之 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (80361054)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化人類学 / アフリカ / ナイジェリア / 民主主義 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究は、ナイジェリアにおいて、民族・宗教・地域対立を乗り越え政治参加の平等性を保証する方策として重要視されている「持ち回り制」と「均等配分制」という2つの政治慣行についてフィールドワークをもとに調査研究ことを目的とする。初年度にあたる平成26年度は、これまで調査を進めてきたイモ州ンビセ地方において、イモ州政府及びエジニヒテ=ンビセ地方行政区を対象とし、州政府/地方政府における「持ち回り制」「均等配分制」の実践について調査を行う予定であった。 しかし、フィールド調査を予定していた時期に、ナイジェリアではエボラ出血熱の感染の報告があった。10月20日には収束宣言が出されるも、調査を予定していた8月から9月にかけては感染拡大を懸念する声が挙がっており、調査を断念せざるを得ない事態となった。 代わって本年度は、平成27年3月28日に実施された大統領選挙について情報収集を行うとともに、日本に暮らすナイジェリア人を対象に聞き取り調査を行った。結果として、申請書にも記載した通り、人々が大統領選挙や、さらには近年話題となっている「ボコ・ハラム」(イスラム教過激派組織)の問題などを、「持ち回り制」や「均等配分制」と関連づけて解釈している点が具体的に明らかになった。ボコ・ハラムについて、日本では国際政治を争点に論じられることが多い。一方で、ナイジェリアでは、宗教対立・地域対立を背景とした政党政治が背景にあり、2つの政治慣行をめぐる解釈の衝突とする言説が広く普及している。これは、申請時に3つの目的の一つとして掲げた②「二つの政治慣習は如何にして守られ、また如何にして破られるのか」を考察する好例と考える。次年度以降、今年度調査できなかった分の保管も含め、ナイジェリアにおけるフィールド調査でより詳細なデータを集めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の申請段階において、初年度となる平成26年度は、イモ州ンビセ地方を拠点とした一ヶ月のフィールド調査を予定していた。イモ州政府及びエジニヒテ=地方行政区を対象とし、州政府/地方政府における「持ち回り制」「均等配分制」の実践について調査を行う予定であった。 フィールド調査については、8月から9月にかけて実施を予定し、その準備を進めてきた。しかし、7月にはナイジェリアにおいて最初のエボラ出血熱感染者が確認された旨の報告があった。さらに8月中旬には、調査を予定していたイモ州の隣州エヌグをエボラ出血熱感染者が政府命令を無視して訪問したとの報道があり、9月上旬には同じく隣州リヴァース州にて感染者死亡の報告があった。ナイジェリアでは10月20日にエボラ出血熱収束の宣言が表明されたが、調査を計画していた当初は収束を予測しえない状況であったことから、調査渡航を断念せざるを得なかった。結果として、当初予定していた計画に対し、予期せざるかたちで遅れが生じた。 一方で、12月にはカメルーンで開催された国際フォーラムにて、これまで研究を進めてきた民主国家下の伝統的権威者の地位について発表を行うことができた。これまでの研究と今回の研究テーマをつなぐヒントを得ることができ、今後の研究への足がかりとなることが期待される。 今年度の調査中止によって生じた遅れについては、今後の調査のなかで補っていきたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成26年度に実施できなかった調査を補完しつつ、計画にそって調査を進めていきたい。平成27年度は、当初予定通り、イモ州ンビセ地方を拠点とし、同地方における「持ち回り制」「均等配分制」の実践と解釈に関する調査を行いたい。 主な調査項目は以下の通りである:(1)過去に実施された州選挙、地方選挙のデータ集種を収集し、2つの政治慣習の実践状況を確認する。(2)村落における自治組織の選挙、伝統的権威者の選出状況等を調査し、2つの政治慣習の草の根への浸透状況を調査する。(3)2つの政治慣習について住民たちの解釈について調査する。(4)昨年度の大統領選挙について、住民たちの解釈を収集する。 特に昨年度の大統領選挙では、現職大統領を破り、元軍事大統領で北部出身、イスラム教徒のムハンマド・ブハリ氏が当選した。イモ州が位置する南東地域は現職大統領を支持した数少ない地域であり、今後の動向が注目されるとともに、大統領選挙について多様な解釈を持つ者たちがいることが予想される。調査にあたっては、イモ州の他の地方にも可能な限り足を運び、二つの政治慣習に関する解釈・言説を収集していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ナイジェリアにおける一ヶ月間(8月~9月)のフィールド調査の予算を計上していたが、 同国にてエボラ出血熱感染者が確認されたことにより、調査渡航を断念した。その後、10月20日にはエボラ出血熱の収束宣言が出されたが、大学との業務との兼ね合いからフィールド調査の時間を取ることができなかった。結果として、海外調査と関わる予算について、大きく繰越金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施予定のフィールド調査において、滞在期間を拡大することによって、繰越金を使用する予定である。また、可能であれば、2月などに追加の調査を行う予定である。それによって、平成26年度にフィールド調査で収拾する予定であったデータを補いたい。
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