研究課題/領域番号 |
26370946
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松本 尚之 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (80361054)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文化人類学 / アフリカ / ナイジェリア / 民主主義 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究は、民政移管からおよそ15年が経過したナイジェリアにおいて、国民の融和と政治参加の平等性を保証する方策として重要視されている2つの政治慣習(「持ち回り制」と「均等配分制」)についてフィールドワークをもとに調査研究を行うことを目的とする。前年27年度の調査では、政治慣習についての人びとの理解は「守る/破る」の二分法では語れない実態が明らかとなった。この点を考慮し、3年目にあたる本年度は平成28年8月から9月にかけてフィールドワークを実施し、前年の知見を深めるデータ収集に努めた。 調査では、主に以下の2点についてデータを収集した。 第一に、政治慣習をめぐる人びとの認識の変化を確認するため、過去の総選挙(主に州選挙と地方選挙)に関する人びとの語りを収集した。過去の選挙は、必ずしも二つの政治慣習に沿って行われたわけでもない。にもかかわらず、人びとは政治慣習が過去から行われてきたものとして解釈していることが明らかとなった。 第二に、国政をめぐる政治慣習と草の根レベルの政治意識の結節点を探るために、地方コミュニティの指導者選びをめぐる人びとの解釈と実践について調査を行った。調査拠点とするコミュニティでは、前年度調査を行った伝統的権威者の候補者選びに加え、本年度には自治組織の選挙が行われていた。それらコミュニティレベルの指導者選びについて調査を行うことで、人びとが特定の候補者を支援・支持する際に、二つの政治慣習の語りをいかに用いているかが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度及び28年度の調査によって、二つの政治慣習に関する人びとの理解について、「守る/破る」を越えた多様な実践・解釈が明らかとなった。二つの政治慣習を尊重する場合でも、持ち回りの順番や、均等にすべき対象をめぐって住民たちは異なる意見を持ち、結果として紛争が生じることを、具体的な事例を通して論じることが可能となった。また、過去の州選挙や地方選挙についての調査を通して、これら政治慣習をコミュニティの「伝統」と論じる言説について、通時的に検証することができた。 その一方で、初年度にエボラ出血熱のため渡航を中止した結果生じた遅れを、十分に取り戻せていない。特に、平成27年3月に行われた総選挙を前後して流布した言説の収集が不十分であり、平成29年度はその調査を課題の一つとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、主にエヌグ州およびイモ州にて調査を行う。 エヌグ州では、ナイジェリア大学ンスカ校に赴き、同大学図書館にて文献調査を行う。平成27年3月の総選挙を前後して出版された雑誌や新聞を収集する。それによって、各種メディアが総選挙にあわせて二つの政治慣習をどのように取り上げているのかを明らかにする。 その一方で、イモ州では、引き続きんびせ地方を拠点とし、同地方における「持ち回り制」「均等配分制の実践と解釈に関する調査を行う。特に、伝統的権威者の後継者選びと自治組織の役員選挙をめぐる問題について、その後の経緯を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度(初年度)のフィールド調査を予定していた時期に、ナイジェリアではエボラ出血熱の感染の報告があった。平成26年10月20日には収束宣言が出されるも、調査を予定していた8月から9月にかけては感染拡大を懸念する声が挙がっており、調査を断念せざるを得ない事態であった。その結果、予算執行に変更が生じたが、平成27年度、28年度を通じて初年度の未遂の調査を補うべく務めてきた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度も引き続き、平成26年度に行う予定であった調査の補完を目指す。
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