本研究は、民政移管からおよそ15年が経過したナイジェリアにおいて、国民の融和と政治参加の平等性を保証する方策として重要視されている2つの政治慣習(「持ち回り制」と「均等配分制」)についてフィールドワークをもとに調査研究を行うことを目的とした。 これまでの調査は主にイモ州ンビセ地方で実施し、2つの慣習がローカルな実践において持つ影響力について調査を行ってきた。特に、地方コミュニティの指導者選びを事例とした聞き取り調査を行った結果、一見すると単純に見える慣習について多様な解釈が生まれていること、それを人々が自らの政治的主張・実践を正当化する手段の一つとして活用している様が明らかになった。 それをうけ、最終年度にあたる平成29年度調査では、ナイジェリア大学(エヌグ州)およびコンベナント大学(ラゴス州)においてアーカイブ調査を行を行うとともに、現地の社会学者・政治愚者と意見交換を行った。アーカイブ調査では、特に2011年及び2015年選挙に関する新聞・雑誌記事を閲覧し、2つの政治慣習に関する言説を収集した。 今回の調査では、連邦選挙における「持ち回り制」と「均等配分制」の実態を確認することができた。特に、これまでの調査で明らかになったローカルな政治実践と同じように、政治慣習について多様な解釈が生じていることを具体的に確認することができた。さらに、地方コミュニティにおいて収集した語りが、連邦選挙をめぐる言説と興味深い一致をなすことが明らかとなった。
|