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2015 年度 実施状況報告書

人類学の外部環境から考える人類学の可変性と可能性:ビジネスと工学系学問を視野に

研究課題

研究課題/領域番号 26370947
研究機関北陸先端科学技術大学院大学

研究代表者

伊藤 泰信  北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (40369864)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードエスノグラフィ / 工学系学問(HCD/UCD) / 人類学の可変性と可能性 / 人類学教育
研究実績の概要

文化人類学(以下、「人類学」と略)は、対象の変化・変貌によって時代時代でその姿を変えてきたと言って良い。今後も、社会(外部環境)の変化にアクチュアルに対応して知識産出モードを変えていく(いかざるをえない)ことに鑑み、本研究は、人類学を取り巻く外部環境(とりわけビジネス実務および工学系学問などの他領域)と人類学との関係を考察しつつ、将来の人類学のカタチの可変性と可能性を提示することが目的である。それは、産業界・ビジネス界の動向などを考慮に入れた、人類学の教育・人材育成を検討することにも繋がる。海外の共同研究者とも協働しつつ、日本企業および工学系学問における人類学的手法(エスノグラフィ)の事業化や応用を視野に入れ、それに呼応して人類学が近未来に向けてどのようにひらいて(拓いて・開いて)いくべきかを検討するものである。
人類学的な知や手法が社会(実務世界)に貢献しつつその領域を拡張していこうとするならば、事業にエスノグラフィを応用している企業が増えつつあり、それと密接で、かつエスノグラフィを一部として摂取している工学系学問(デザイン工学等)もある、といった布置のなかで、人類学(者)が実社会にどのようにコミットメントしていくかということが問題になる。そしてそれは、産業界・ビジネス界や工学系学問などの(人類学の)外部環境を考慮に入れた人類学教育ないし人材育成(社会にどのような見識をもった人類学の卒業者・修了者を送り出すか)を検討することに繋がる。
本研究の構想や各論についての議論は、後述するように、学会や企業研究者らとのイベントなど(準備の打合せを含む)などを通して深められた。その成果は複数の論考や学会発表として結実している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

具体的な研究方法として【i】企業におけるエスノグラフィの事業化についての調査と分析。企業が何を求めて人類学的手法(エスノグラフィ)を用いようとしているのか、また、いかに自社の業務に適合するようにエスノグラフィをカスタマイズしようとしているのか、その諸特徴の抽出。【ii】工学系学問におけるエスノグラフィの応用をめぐる調査と分析。工学系学問(デザイン工学、ユーザビリティ工学)では、エスノグラフィを部分的に摂取し、援用している動向が見られるが、デザインの上流工程にエスノグラフィは位置づけられ、コンセプトの獲得手法(ペルソナ、シナリオ手法)や解決案の作成手法(プロトタイピング、アクティングアウト)などと組み合わせられて用いられる。「Rapid ethnography(即席のエスノグラフィ)」といった工学的な “変換” がなされるなど、人類学的なそれとは大きく異なる。それらについて具体的な事例調査から比較・検討を行うこと。【iii】数十年前に今日の人類学の姿を誰も想像できなかったことに鑑みれば、人類学が何を問い、応えるのかは将来にひらかれている。時代および対象の変化・変貌に応じて変わりゆく学(人類学)についての学(人類学)という視角(anthropology of a changing discipline)からの、人類学教育ないし人材育成のあり方の検討。平成27年度に関しては、【ii】についてはさほど進展がなかったが、HCDのリサーチャーと研究会などで議論するなど、前に進めるべく尽力した。【i】については複数のリサーチ会社(Ethnography vendors)において参与観察やインタビューを実施した。さらに、【iii】については、フィールドワーク教育関連のシンポジウムへディスカッサントとして参加するなどし、議論を重ねた。英文査読付き論文も含む複数の論考や口頭発表も行い、人類学教育の分科会を学会で代表者として組織するなどした。以上から順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

引き続き、上記の【i】【ii】【iii】の具体的な事項について調査・検討を継続する。【i】については、日本企業で活用されているエスノグラフィについての実例を、複数のリサーチ会社(Ethnography vendors)を対象に調査することで更に推し進めるとともに、企業との共同(委託)研究などの実践的・実務的な取り組み(平成27年からは大手通信会社研究所との消費者行動把握のための共同研究も始めており、平成28年度も継続される)も同時に推進することで、“エスノグラフィのエスノグラフィ”(メタ人類学)的調査と、実践・実務の、両面からアプローチする。【ii】に関して、デザイン工学系へのエスノグラフィの組み込み、および、それと密接に関連する工学系(HCD/UX)研究の実情についてそれらの研究者らとの議論を通じて把握する。【iii】の人類学の将来的な人材育成のあり方の検討については、文化人類学会関連の諸研究会や理事会等の機会を活用しつつ、検討を更に推し進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

予定していた複数の企業での聞き取り調査、および、工学系研究者との面談を次年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

企業での聞き取り調査および成果発表のための旅費・学会参加費として使用する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 民族誌なしの民族誌的実践──産業界における非人類学的エスノグラフィの事例から(2014年度九州人類学研究会オータムセミナー報告「ホームでの/民族誌としての応答」飯嶋秀治・山路勝彦・増田研・伊藤泰信・宮岡真央子)2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信
    • 雑誌名

      九州人類学会報

      巻: 42 ページ: 17-21

  • [雑誌論文] 文化人類学・社会学的な観点から『+α』の教育を考える2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信
    • 雑誌名

      「日本語+α」の人材養成と人文社会科学系研究との連携(「日本語教育・留学生教育における日本型『知の技法』の活用に関する研究」研究チーム)

      巻: なし ページ: 25-31

  • [学会発表] On Business Ethnography: Anthropological methods for identifying customers hidden needs2016

    • 著者名/発表者名
      Yasunobu Ito
    • 学会等名
      JAIST International Symposium on Knowledge Science
    • 発表場所
      Shiinoki Cultural Complex, Kanazawa, Japan
    • 年月日
      2016-03-14
    • 国際学会
  • [学会発表] 問題提起(2)「第 3 の SST 市場から人付き合いを学ぶ『たんたんマルシェ』」2016

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信
    • 学会等名
      シンポジウム「フィールドワーク教育ってなんだ?」(「応答の人類学」第24回研究会+「大学教育とフィールドワーク」第3回研究会)
    • 発表場所
      北九州市立大学北方キャンパス(福岡県北九州市)
    • 年月日
      2016-01-11
  • [学会発表] 大型加速器を用いた大規模物理学実験グループにおける組織マネジメントと内部コンフリクト2015

    • 著者名/発表者名
      足立枝実子、伊藤泰信
    • 学会等名
      科学技術社会論学会第14回年次研究大会
    • 発表場所
      東北大学川内南キャンパス(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2015-11-22
  • [学会発表] Competition and Cooperation in a Big Science Project2015

    • 著者名/発表者名
      Emiko Adachi, Yasunobu Ito, Katsuhiro Umemoto
    • 学会等名
      Annual meeting of the Society for Social Studies of Science (4S)
    • 発表場所
      Sheraton Downtown, Denver, Colorado, USA
    • 年月日
      2015-11-14
    • 国際学会
  • [学会発表] 「事例1 人工物が体につくことの意味」へのコメント──ナラティヴ、コミュニケーション、非対称の関係性2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信
    • 学会等名
      日本プライマリ・ケア連合学会第11回秋季生涯教育セミナーワークショップ「症例検討会で家庭医療学×医療人類学!」
    • 発表場所
      大阪科学技術センター(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2015-11-08
  • [学会発表] 大型加速器を用いた大規模物理学実験におけるナレッジマネジメント2015

    • 著者名/発表者名
      足立枝実子、伊藤泰信、梅本勝博
    • 学会等名
      研究・技術計画学会第30回年次学術大会
    • 発表場所
      早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)
    • 年月日
      2015-10-11
  • [学会発表] Ethnography in the corporate village in Japan: Anthropological methods for identifying customers hidden needs2015

    • 著者名/発表者名
      Yasunobu Ito
    • 学会等名
      The 10th Biyani India-Japan Bilateral Conference (BICON-2015)
    • 発表場所
      Biyani Girls College, Jaipur, India
    • 年月日
      2015-09-24
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 行動観察×デザイン×エスノグラフィ──文化人類学者=エスノグラファーの視点2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信
    • 学会等名
      イノベーションデザインセミナー「行動観察 × デザイン × エスノグラフィ」
    • 発表場所
      北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)東京サテライト(東京都港区)
    • 年月日
      2015-08-30
  • [学会発表] (分科会代表者:伊藤泰信「人類学教育と応答性──人類学者の再生産モデルを超えて」)人類学教育と応答性──人類学者の再生産モデルを超えて2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信
    • 学会等名
      日本文化人類学会第49回研究大会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2015-05-30
  • [学会発表] 社会人・企業人教育と応答性──非人類学的エスノグラフィとの関係から考える2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤泰信
    • 学会等名
      日本文化人類学会第49回研究大会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2015-05-30
  • [図書] 'Ethnography'in Japanese Corporate Activities: A Meta-anthropological Observation on the Relationship Between Anthropology and the Outside,H Nakamaki, K Hioki, I Mitsui, Y Takeuchi (eds) Enterprise as an Instrument of Civilization: An Anthropological Approach to Business Administration2016

    • 著者名/発表者名
      Yasunobu Ito
    • 総ページ数
      18
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2017-01-06  

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