文化人類学(以下、「人類学」と略)は、対象の変化・変貌によって時代時代でその姿を変えてきたと言って良い。今後も、社会(外部環境)の変化にアクチュアルに対応して知識産出モードを変えていく(いかざるをえない)ことに鑑み、本研究は、人類学を取り巻く外部環境(とりわけビジネス実務および工学系学問などの他領域)と人類学との関係を考察しつつ、将来の人類学のカタチの可変性と可能性を提示することが目的である。それは、産業界・ビジネス界の動向などを考慮に入れた、人類学の教育・人材育成を検討することにも繋がる。海外の共同研究者とも協働しつつ、日本企業および工学系学問における人類学的手法(エスノグラフィ)の事業化や応用を視野に入れ、それに呼応して人類学が近未来に向けてどのようにひらいて(拓いて・開いて)いくべきかを検討するものである。 人類学的な知や手法が社会(実務世界)に貢献しつつその領域を拡張していこうとするならば、事業にエスノグラフィを応用している企業が増えつつあり、それと密接で、かつエスノグラフィを一部として摂取している工学系学問もある、といった布置のなかで、人類学(者)が実社会にどのようにコミットメントしていくかということが問題になる。そしてそれは、産業界・ビジネス界や工学系学問などの(人類学の)外部環境を考慮に入れた人類学教育ないし人材育成(社会にどのような見識をもった人類学の卒業者・修了者を送り出すか)を検討することに繋がる。 最終年度となる本年度も、企業研究者や工学系(UX/HCD)研究者らとの研究会や打合せなどを実施した。その成果は日本文化人類学会などの国内学会やIUAESなどの国際会議で発表され、論文にもまとめられた。その成果の一端は次年度の国際会議などでも発表予定である。
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