研究課題/領域番号 |
26370951
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
申 鎬 九州大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (10701469)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 在朝日本人 / 植民地 / 引揚 / オーラルヒストリー / ポストコロニアル / 朝鮮半島 |
研究実績の概要 |
27年度は、研究実施計画に基づき、以下の研究を行った。 1.前年度に引き続き、福岡市を中心に活動する「引揚者の 集い」のメンバー及び彼らの個人的なネットワークを活用し、これまで延べ29人の「在朝日本人」とのインタビュー調査を実施した。さらに、その中の7人の在朝日本人に対しては、複数回に亘って集中的な調査を実行しており、今後ライフヒストリーとしての出版を目指している。 2.関連する文献及び文字資料の収集においては、27年度は、主に日本と韓国の公文書の収集に重点を置き、戦後における在朝日本人に対する日韓の対応について調べた。3.戦前の在朝日本人の生活空間を調べるためのケーススタディーとして、前年度に引き続き、大邱市中区庁に保管されている土地台帳調査を実施し、韓国大邱における「在朝日本人」の状況を調べた。また、大邱市の旧日本人町地域である北城路と西城路地域のフィールドワークを実施し、現在残っている日本建築の状況を記録し、データの整理 作業を行っている。これらの研究成果は、28年度中に資料集として刊行する予定である。4.また27年度からは新しく戦後の在朝日本人の日本社会への定着過程を調べるために、大分県の引揚者開拓村地区のフィールドワークを実施し、関連者インタビュー及び文献調査を行った。5.27年度の研究成果の一部を27年6月に『韓日民族問題研究』第28号に投稿しており、27年10月には東アジア学会にて発表した。これらの研究成果においては、これまで日本vs.朝鮮、もしくは日本人vs.朝鮮人の構図で行われてきた既存の研究視点から逃れ、朝鮮植民地研究における、日本vs.在朝日本人という新しい視点を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において中心作業である在朝日本人のインタビュー調査が順調であり、予定以上の聞き取り調査が得られた。また、今後、継続的にインタビュー調査を行うために必要 不可欠な調査対象者の所在把握においても、対象者ネットワークがより広がっている。関連資料の収集においても、公文書や土地台帳、生活空間のフィールドワークにより、本研究を行うための多くのデータが得られている。28度においても、これまで同様にインタビュー調査及び資料調査を通じて、これまで朝鮮植民地研究の中で描かれていない史実を明らかにするとともに、新しい研究視点を提示していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
1)27年度同様「在朝日本人」のインタビュー調査及び「ネットワーク」追跡調査を継続的に行う。2)日本国内及び韓国の関係機関にある資料の収集を継続的に行う。また、在朝日本人が生活していた地域フィールドワークを実施しつつ関連資料を収集する。 3)以上の調査成果は、データーベース化し、今後の在朝日本人研究への寄与と社会的還元を目的とし、アーカイブを構築する。4)27年度までは、研究対象者の高齢化を踏まえて、インタビュー調査に重点を置いてきた。28年度は、これまで研究蓄積を生かし、日韓の学会などでの口頭発表及び論文掲載を通じて、日韓社会により多くの研究成果を発信する。
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