本研究は、四万十川と筑後川における漁家の生業活動と自然環境との関わりについて、漁撈活動を中心に考察した。四万十川では伝統的な漁撈活動と民俗知、環境認識が残っていたが、観光化やFRP船の導入により新規参入者が増え、旧来の慣習が崩れ、生業複合のあり方が変化していた。また、河口工事により、潮汐変動や汽水域、生態系が変化し漁民の環境利用に影響を与えていた。一方、筑後川ではダムの建設等により、生業としての漁撈活動は衰退し、養殖・放流などの資源保護へと移行していた。ただし、一部の漁家ではダムの放水や水位変動をみながら漁を行うなど、ある意味人工的な河川環境の中で新たな環境利用が生じていることが分かった。
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