本年度は、マカッサルとジャカルタで調査を実施した。 (1)マカッサルでは、若い世代の文学演劇など創作活動を行う者から聞き取り調査をおこなった。2011年に設立された若い芸術家たちによる文化団体が主催する「マカッサル国際作家フェスティバル」に参加し、その機会を通じてイラガリゴ叙事詩に関する若い世代の知識、文学的関心の動向等について知ることができた。(2)ハサヌディン大学文化学部のスタッフからは、ブギス文字で綴られたロンタラ文書の解読についての新しい教授法が試みられたことで、古文書に対する学生の学習意欲が向上していることがわかった。(3)ジャカルタの国立文書館所蔵のイラガリゴ稿本、ロンタラ文書を確認した。マカッサルでは、ハサヌディン大学中央図書館、南スラウェシ州言語研究所、南スラウェシ州文化価値振興研究所において、主として地域言語、神話民話に関わる資料を収集した。(4)当初予定していたイラガリゴ叙事詩稿本の電子化については、オランダ・ライデン大学中央図書館とラガリゴ協会との交渉により、稿本(NBB 188)の電子化が実現し公開された。全12巻2994頁に及ぶ写真ファイルのダウンロード作業を行い、CDに保存し、ハサヌディン大学文化学部地域文学専攻に一式を提供した。(5)ハサヌディン大学で開催された「全インドネシア文化学教員連合」第7回国際会議に招待され、「境界地域サバにおけるブギス移民ディアスポラとアイデンティティ」と題して講演した(2017年9月)。 (6)当初、本年度にハサヌディン大学で開催を予定していた「ラガリゴ」セミナーは、計画が大きく展開し、同大学文化学部とソッペン県との共催で、「ラガリゴ国際会議」として開催される(2018年10月)にソッペン県で開催されることになった。筆者も賛同者として参加する予定である。
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