研究課題/領域番号 |
26370957
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
李 鎭榮 名桜大学, 国際学部, 教授 (30269170)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社団の再生過程 / 近代性 / 韓国華僑 / クヮンシ(関係) / 再生 / 代替 |
研究実績の概要 |
韓国の華僑の社団の再生過程について、国内外の文献研究と韓国ソウルでフィールドワークを行った。文献研究においては、日本及び韓国の「近代性」と華僑の移住の歴史的な背景について調査した。フィールドワークにおいては、韓国の華僑の地位向上のため、協会をあげて努力している大邱市ととソウル市の漢城華僑協会を中心に、社団組織の再生過程について調査した。 華僑社会の中で人間関係の鍵となる「関係」の維持と再生について調査した。韓国人と社会への被害者意識から韓国の華僑の調査は極めて困難であるが、今回ソウルの華僑協会の会長から全面的な協力が得られたのは今後の調査のための大きな収穫である。 華僑協会会長の協力と尽力により、70年代にアメリカに移住し、韓国社会に背を向いて暮らす華僑研究者を招聘し、申請人と共同調査研究が築けたことは今後の研究調査のための大きな収穫である。 その過程で、今日の韓国の華僑には「クヮンシ」(関係)の維持」云々できるようなレベルのクヮンシがほとんど破滅で、クヮンシの再生の土台が「極めて貧弱」であることが徐々に見えてきた。今後は、このような視点から調査研究が必要である。つまり、クヮンシの存在が当たり前ではない現在の状況が韓国の華僑社会に及ぼす影響と実態について調査研究を続ける。 韓国の華僑にとって最も大切な「クヮンシ」が築けないのなら、韓国の華僑の人間関係において代替手段となりえるのはなんであるのかを追跡するとより深みのある研究調査になるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査研究を通じて、韓国の華僑社会には「クヮンシ」と呼べるような、人間関係がほぼ崩れており、クヮンシの再生においても華僑社会の規模及び既存の人間関係からは極めて困難な状況と認められた。しかし、このような側面が明らかになったのも華僑との人間関係の構築の成果というべきもので、今後の調査研究が拍車がかけられるものである。 ソウルの華僑は彼らの人間関係においてもっとも重要な「クヮンシ」が意味が華僑社会内部では機能失効状態にあると思われる。その反動だろうか、韓国の華僑は韓国全土規模で「クヮンシ」を拡大しつつも、さらに、今までさほど意識することのなかった韓国人との関係へと拡大しているような印象を受けた。 このようなクヮンシの拡大は韓国の華僑に「生の意味」を維持させる効果があると思われ大変興味深い内容であると確信できた。 初年度の研究計画段階においては見えてこなかった部分、つまりクヮンシの存在の当為性ならぬ限界が見てきた点は研究の独創性の面でも大きな収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は韓国の華僑内部のクヮンシの再生(新たな創造)と韓国の華僑外部の韓国人に向けてのクヮンシの拡大(適用)に焦点を合わせ調査研究していく。 さらに、現在猛烈な勢いで華僑社会を引っ張っている華僑協会会長の全面的な協力を得て、彼らの活動の具体像について調べる。 なお、韓国社会に背を向いて暮らす海外の元韓国の華僑を訪問し、移住先の華僑と韓国で暮らす華僑とのクヮンシの維持と機能について調査研究したい。 海外移住の華僑が移住先の既存の華僑社会にも受け入れられてないため、また移住先の移民としてフールメンバーシップも与えられていないため、移住華僑の移住先での定着も一時的な居住の側面も決して弱いものではない。そのため、移住華僑たちは「韓国の華僑」という極めて不安定な身分を維持している場合が多い。今後の調査においては、移住華僑による韓国の華僑とのクヮンシの維持と彼らの生存戦略についてと遊佐研究を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入において節約できたので。無理に予算を使わず次年度につなげるために残した。
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次年度使用額の使用計画 |
少額なので、今年度の消耗品の購入の足しにしたい。
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