研究課題/領域番号 |
26370960
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
宮坂 敬造 東京福祉大学, 教育学部, 教授 (40135645)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 文精神医学と文化医療人類学の接続領域 / グローバリゼーション以降の文化観の刷新 / モントリオールにおけるジラム研究会の意義 / 文化精神医学と近年の社会的芸術療法の展開 / 森田療法の国際化と文化観刷新 |
研究実績の概要 |
今年度は当初計画よりも縮小せざるをなかったが、以下の研究調査を実施。①5月30日~6月8日の短期日カナダ・モントリオールに調査出張し、マッギル大学の文化精神医学部門を中心にL.J.カ-マイヤ-教授、E.ジャ-ヴィス、J.グッズナー医博と面談し、文化観刷新調査課題に加えて今回は芸術療法と文化精神医学の関わりと近年の新展開という見地を加え、本研究課題に補助線となる面談データーを得た。これは新たな成果の母胎となりうると考えている。同時期にマッギル大学を訪問中の J.ア-ピン医博(文化精神医学/ジュネーヴ文化精神医学クリニック)とも面談を行い、スイスの例について補足的面談データーを得た。更に、F. W. ヒックリング医博(ウェスト・インディー大学社会精神医学名誉教授)が学校教育場面で予防治療的に社会精神医学的演劇療法を導入して、社会医学に文化の軸を独特の展望から組み込む運動を行っている点を知り、同先生との面談を通じて、文化精神医学における文化観念の刷新に新しい側面からアプローチする追加構想を得た。また、ブラジル・サンパウロに拠点を置き、病院の入院・および外来患者と近隣の住民との共同の演劇祭を開催してきたV.ポルデウス医博との面談を通じて、北米圏の文化観とは一面で非常に異なる捉え方をするブラジルの精神医学の流れにも触れることができた。Giram 関連の研究活動の回顧と評価については、D.ハウズ教授(コンコーディア大学/法・医療・感覚人類学)、M. トシナン名誉教授(ケベック大学モントリオール分校)との面談調査を行い、資料を収集した。②日本においては、森田療法に関する国際的評価の見直しを扱った精神医学・臨床人類学者たち、とくに、海外から訪れたブリティシュ大学I.イシヤマ准教授、モナッシュ大学P.ルヴァイン准教授、N.セメノバ医博(ロシア共和国健康省精神医学研究所)との面談調査を実施。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本務の大学の実質コマ数が春学期は10コマと荷重になり(演習は正規コマ数に数えられていなかったが実質的にはかなり手間がかかった)、伊勢崎、池袋、名古屋キャンパスへと長距離移動のかたちで出講しつつ行う講義と学生指導用務が体力的に負担となっていった。また、実習巡回等の義務、学生クラス担任としての学生管理義務と書類報告義務等、他大学にはなかった用務による事務量の増加分もあり前任校より推計40日ほど業務が多くなっていき、本務校において研究調査時間をかなり削って、教育や事務用務に割かざるを得ない展開となっていった。前任校と比べると科研研究に割ける時間が予想よりかなり少なくなってしまった点が科研費研究が遅れた大きな理由であった。夏季休暇期間が通常大学の半分であるが、これが2ヶ月弱用意されていたなら、もっと研究調査に費やせたはずだが、本務校の用務が当然優先される教育中心大学なのでやむをないと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、夏休みも通常大学のように確保でき、もっと研究調査時間が確保できる別の教育研究機関に移行する予定であるため、主として研究調査時間をもっと多く確保するというやりかたが一定程度可能となるため、本年度の遅れを取り戻す計画である。また、スカイプによる調査を積極的にとりいれることを通して、海外のみならず、国内研究も進捗程度を高めていきたいと考えている。 文化精神医学において、とくにジャマイカやブラジルなどにおいて芸術療法を地域のコミュニティに拡張適用している近年の活動に副次的焦点をあてて、本研究課題「文化精神医学と文化人類学における文化観の刷新過程と近年の展開」のひとつ新たな方向を加えてみたい。 森田療法の国際的広がりの検討も追加付加課題とする意義も検討してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費事務担当の教務課会計係の方の効果的なサポートを得られていただけに残念であるが、本務校の教育業務すなわちコマ数が前任大学に比して実質1.5倍を超え、また、学生管理業務、実習巡回用務、それに関する事務報告義務などが前任校と比べ、推計、年間40日以上の作業時間を余分に取られた点など、予想以上に研究に当てる時間が少なくなってしまった点がまずあげられる。それに加え、夏季休業期間が通常大学の半分という点があり、また、伊勢崎、池袋、および名古屋キャンパスへの長距離出講が体力的に負担となっていった点もあった。
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次年度使用額の使用計画 |
所属機関を移動することにより、研究調査時間を本年度よりも一定程度増加させることが可能な見込みである。また、夏休みに2週間以上の集中ないし数回に分けた出張を行う予定。これにより、研究調査時間を確保して遅れを取り戻す計画である。研究時間が増えれば増えるだけ、期待される成果が挙げられていると考えている。
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