研究課題/領域番号 |
26370960
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮坂 敬造 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (40135645)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 文化観の刷新 / 文化精神医学 / 文化人類学 / 医療人類学 / 接続領域の成立と拡大展開の過程 / 交錯的異文化接触事態 / 文化インタ-フェイスと文化改訂運動 / グロ-バリゼ-ション以降の新局面 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、当初計画よりもかなり縮小せざるをなかったが、以下の研究調査を実施。①7月30日横浜の国際学会に招聘されたマッギル大学L.J.カ-マイヤ教授と、研究課題進展方向に関し3時間の検討機会をもった。②前年度に接触して注目していたF.W.ヒックリング医博らによってジャマイカで進められている新しい文化精神医学運動について、メイルのやりとりを通じて一部の資料をえ、本研究課題に関連した意義を検討。③そうした新しい運動が院外における患者・学童児を包む絵画や演劇上演の過程でのワ-クシップを核としていることから、文化精神科医たちの側からの一種の当事者運動の方向にもよりそった文化運動である点を検討し、本研究課題の文化観の刷新動向理解のための資料とした。④10月初旬宇都宮で開催の多文化間精神学会に参加し日本の多文化精神医学の動向に触れつつ、次年度のインタビュー追加調査の段取りを準備。⑤平成29年2月中旬一週間程度ベトナム・ハノイとその後背地域で調査した機会に、本研究課題との関連で伝統的民俗治療儀礼の現地観察調査を実施。伝統的民俗治療に対する医療人類学・文化人類学の諸見解の変化を検討することも、交錯的異文化接触事態に着眼する本研究課題の補助線として意義があるためである。また精神病院も訪問。 ⑥平成29年3月下旬―4月1日の8日間の日程でシンガポールに出張し、同地の文脈で多文化的精神保健と統合的心理療法を行うナンヤン工科大学リ-・ブ-ンオオイ博士にインタビュ-。同地の現状では生物学的精神医学派が多数派だが、華人系やインド系マレ-系に散在する民間医療の現代的変化に治療的意議が見られる点で、本研究課題に関与する資料となる点を混じえて討論の機会をもち、同地の民間治療儀礼の参与観察も実施。インド系華人・マレ-系文化活動者、シンガポ-ル国立大学研究者とも交流。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度は、慶應義塾大学名誉教授および同論理と感性のグロ-バル研究センタ-共同研究員として研究上の組織に所属したが、同時に、学校法人・日本教育財団東京通信大学(仮称)設立準備室で、設立準備作業に携わった。この用務に最重点を置く必要があったため、この年度は、夏期に予定していたカナダ出張が不可能となった。なお、3月に予定していた豪州出張は、協力者P. ルヴァイン先生が不在のため、豪州調査予定を平成29年度にずらし、豪州の文化精神医学にも関連する地域であるシンガポール出張に組み替えた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、本年度は、勤務先本務との兼ね合いで研究に取り組む時間を7月以降、可能な限り増やし、与えられた調査費用限度内とはなるが、その費用配分の一部を再検討し、調査にあてる国内出張と海外出張の延べ日数をそれぞれ2週間以上、3週間以上に増やすことを試みる。 また、主としてカナダのマッギル大学・文化精神医学に連なるネットワ-クが中心となったが、本年度は、英仏の文化精神医学・医療人類学の相互関連の近年の展開の現地短期調査を行い、それに関連した文献収集による整理と検討を加えてゆく。 および、平成27年度に検討し始めた文化をまたがる森田療法の試みの検討に関連し、可能な範囲で、豪州先住民に対して、森田療法的な接近をくわえつつトラウマの治療をおこなう動きに関して、P.ヴァイン先生らから文献情報を入手し、日本独自と思われた療法が新しい試みのなかに一部取り入れられつつある動向の意味を本研究課題にそって検討する。 なお、本研究課題の文化観刷新の検討の一部に関連して、伝統的な民俗的治療に対する医療人類学・文化人類学の諸見解の変化を検討することも交錯的異文化接触事態に焦点をあてる本研究課題に関与的であるため、その検討をおこなうための小規模な関連調査の付加を本年度も試みる。さらに、文化精神医学の臨床家たちが最近、ジャマイカやブラジル、カナダなどで行い始めている院外の芸術・演劇のワ-クショップ運動の文化観の刷新の局面に注目し、さらなる付加的な調査を可能な範囲で加える。この方向線上で、本研究課題との内在的関連にも注意しつつ、アウトサイダ-ア-トに関する文化精神医学と医療人類学・文化人類学からの検討を比較する検討を加え、本研究の文化観刷新の検討課題の補助線とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、慶應義塾大学名誉教授および同論理と感性のグロ-バル研究センタ-共同研究員として研究上の組織に所属したが、同時に、学校法人・日本教育財団東京通信大学(仮称)設立準備室で、準備作業に携わった。この用務分担に最重点を置く必要があった。そのため、夏期に予定していたマッギル大学への出張調査も含め、本研究の訪問調査にあてる時間を予定どおりにとれない展開となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度は勤務先学校法人本務との兼ね合いで研究に取り組む時間を7月以降可能な限り増やし、以下の調査を平成29年度に繰り延べ、国内出張と海外出張調査の延べ日数をそれぞれ2週間以上3週間以上に増やすことを試みる。現在まで主としてカナダのマッギル大学・文化精神医学に連なるネットワ-クが中心となったが、本年度は英仏の文化精神医学・医療人類学の相互関連の近年の展開の現地短期調査を行い、それに関連した文献収集による整理と検討を加えてゆく。文化観刷新の検討の一部に関連して、伝統的民俗治療に対する医療人類学・文化人類学の諸見解の変化を検討することも交錯的異文化接触事態に着眼する本研究課題の補助線として意義があり、ひき続き小規模な関連調査の付加を本年度も試みる。さらに、アウトサイダ-ア-トに関する文化精神医学と医療人類学・文化人類学からの検討を比較する検討を加え、本研究の文化観刷新の検討課題の補助線とする。
|