平成29年度は、最終年度であるが、これまで予算規模に応じて当初計画を縮減した経緯を踏まえて、グローバリゼーション以降の文化精神医学と文化医療人類学の接続領域の展開と文化観の刷新について本研究の実施範囲での総括のため、追加調査を行い、インタビューをふくむ調査資料蒐集・文献蒐集と整理・検討・分析を行った。文化観および精神に関わる新旧のモデルの交錯にかかわる国内調査(北海道札幌学会と調査、国立民族博物館調査研究会と調査、京都大学および大阪大学研究討議と調査)のほか、以下の海外調査を実施した。①平成29年3月22日~4月1日[予算消化としては本年度のためにここに記載―実質的には前年度の活動ではあるが、研究課題にかかわる現地調査・資料調査・インタビュー・研究討論を実施]の期間、民間医療の現代的変化と治療的意議に関わる追加調査と研究討論を実施したシンガポール調査、11月22日~12月4日の期間シンガポールでの再調査と、民間医療の現代的変化の異文化交錯領域への関与付けの検討、平成30年3月11日~3月21日の期間、カナダ・モントリオールのマッギル大学社会・文化精神医学部門での短期客員研究員として調査出張し、L.J.カ-マイヤ-教授との研究討論、S.ヴィシレ助教(文化医療人類学)、A.ゴメス医博(文化精神医学)らと研究討論したが、とくに新しい世代の研究者たちの文化観念と文化精神医学と文化医療人類学の接続領域の展開への関与についてインタビューを行った。興味深いのは、精神のモデルについての精神医学・哲学・神経科学が絡み合った新潮流があり、それが文化人類学にも波及する兆候がみられた点であった。解釈人類学の影響をうけて展開した文化精神医学がグロバリゼーション以降、エスノスケイプに類比されるような異文化交錯状況のスケイプを部分的に形成し、文化人類学に強い示唆をもたらした経緯の解明を本研究で行った。
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