歴史的に見て、水田環境は稲作にだけ利用されてきたわけではない。本研究では、とくに水田畦畔におけるアゼマメ(畦豆)栽培に注目して、その技術と生計上の意義および歴史について明らかにした。そうした畦畔栽培は水田環境の多面的利用形態の一技術、つまり水田畑作の典型として位置づけられる。 水田畑作は水田漁撈や水田狩猟ととともに水田環境の多面的利用技術を形成するが、そうした多面的利用技術はさまざまな生業を包括するもので稲作民にとっては重要な生計維持システムとして機能した。そうした生計維持システムとそれにより支えられてきた社会経済および文化のあり方を従来の「稲作文化」に変わって、「水田文化」として提唱する。
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