研究課題/領域番号 |
26370968
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宋 基燦 立命館大学, 映像学部, 准教授 (60636091)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 在日コリアン / 在日朝鮮人 / 民族教育 / 朝鮮学校 / エスニシティ |
研究実績の概要 |
本研究は、実質日本最大の外国人学校組織である「朝鮮学校」の教育とその効果、それが日本社会で持つ意味を明らかにするために人類学的研究手法を用いた実証的研究である。研究代表者は12年前に朝鮮学校の現場で4年間の参与観察を行ったことがあり、朝鮮学校の経験者への追跡調査を通じて朝鮮学校の世界を描き出すことを目的としている本研究は、その主な研究対象として12年前の研究当時の生徒と教師を設定している。本研究は、このように朝鮮学校を経験して日本社会の市民として生活していることへの研究と、現時点の朝鮮学校(ヘイトスピーチ事件以降の)へのフィールドワークを通じて現時点の朝鮮学校民族誌を構築すること、また全国の代表的な朝鮮学校を訪問、朝鮮学校の全国的規模とその教育力量・可能性と問題点などを把握することの3つの中心課題を想定している。ところが、現時点では、卒業生への追跡調査と全国の主な朝鮮学校訪問調査の方はやや進んでいるが、現時点の朝鮮学校現場への参与観察の方は、本務校の教務などにより、まとまった時間を確保することが困難で、少し遅れていると判断せざるをえない。去年から、12年前の研究当時の調査現場における再調査の厳しさを認知していたために、主な調査現場を京都の朝鮮学校へと移していたが、現時点でもまとまった時間を使った人類学的調査はなかなか難しいのが現状である。 卒業生の追跡調査には、朝鮮学校を卒業して日本の高校講師になった卒業生と、韓国へ留学し韓国に定住しつつ、朝鮮学校で学んだ在日コリアンの文化を韓国へ紹介することを企画している卒業生など、主なインフォーマントが揃いつつある。全国の主な朝鮮学校への訪問調査は、まだ十分ではないが、今年は関東地域への調査を行うことで、全体像はつかめると見込んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人事異動による新しい環境への適応はある程度できているが、平成27年は、赴任2年時として「基礎演習」という初年次教育の責任者を任されるなど、業務負担が急激に増加した。その理由は、そもそも所属する映像学部の教員不足にある。ところが、赴任3年次になる今年は、学部の仕事にもある程度慣れているために、本研究課題の成果的終結へと今よりエフォートを割り当てることができると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
所属する大学の業務とのバランスを考えて、まとまった時間が必要である学校現場への参与観察とそれによるエスノグラフィーの構築への比重を調節することが必要である。また全国の主な朝鮮学校への訪問調査も大学の業務との関係で、数を増やすことはなかなか難しいことがわかった。そのため今後の研究の推進方向は、そもそもこの研究の中心課題であった、朝鮮学校の卒業生への追跡調査を中心に朝鮮学校における経験と現在生活している日本社会における連続性と非連続性を中心に研究成果をまとめていくことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外学会での研究発表関連で旅費の支出が当該年度の予測より大きくなったことを受けて、他の項目の予算の執行を調節しようとした結果、754円という金額の次年度使用額が生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今回の次年度使用額754円は物品費に回して使用する予定である。なお、今後研究計画に合わせて、予算の執行計画を綿密に確認しつつ、予算を執行する予定である。
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