60 年以上の長い歴史と日本最大外国人学校組織という規模とは対照的に、今まで朝鮮学校に関連して行われた研究は極端に少ない。その理由は、政治・文化的分離主義を標榜する朝鮮学校の閉鎖性にある。そのため、今まで行われた朝鮮学校に対する研究の殆どは朝鮮学校関係者や総連系在日コリアンのような「内部者」によって行われたものであり、日本人研究者による研究は非常に少ないのが現状である。 本研究は、このような環境の中で、外部者の立場から朝鮮学校へ人類学的調査を行い、朝鮮学校の民族誌を書いた経験に立ち、朝鮮学校を卒業した卒業生の生活世界へ目を向けている。本研究は現時点における朝鮮学校の教育課程に関する人類学的現場研究と同時に、10 年前の研究当時生徒だった人々への追跡インタビュー調査を通じて、研究代表者がすでに書いたエスノグラフィ―の詳細な内容を、当時の調査対象だった卒業生の記憶と解釈に照らし合わせて検証し、朝鮮学校に関する総合的かつ立体的なエスノグラフィ―を構築することを目指した。 研究は、現段階の朝鮮学校への訪問研究とともに、研究代表者の初期研究当時生徒だった卒業生を追跡し、インタービューすることで勧められた。その過程において、朝鮮学校を卒業し、韓国で活躍している卒業生達の存在が見えてきた。トランスナショナルな実践をしている彼(女)らに研究の焦点を合わせ、最終年度は特に、朝鮮学校卒業後韓国社会で活動している卒業生のライフヒストリー記録することと、これと関連して最近韓国に拠点を移しつつある日本の在日コリアン研究関連アーカイブスに関する現況調査に集中した。
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