本研究は、葬儀従事者へのインタビュー、火葬場での参与観察、中華民国期以来の葬儀関連政策に関する文書資料の分析を方法として、葬儀の場で表現される、近現代中国における「人」の概念の変遷を明らかにした。中華民国期に「発明」された新たな様式である「追悼会」は、中華人民共和国期に至って個人と国家を直接向き合わせる儀式へと変容したが、改革開放以降、殯儀館のサービスに多様化がみられ、徐々に「個人化」するとともに、かつて排除された「孝」、「家庭」内での期待された役割が入り込み、「人」の主要な表現となりつつある。ただし、そこで強調される「孝」や「良き夫、妻」は、旧社会のそれとは同一ではないことを明らかにした。
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