研究課題/領域番号 |
26380001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新田 一郎 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40208252)
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研究分担者 |
和仁 かや 九州大学, 法学研究院, 准教授 (90511808)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 法制史 / 史料 / 近世 / 近代 |
研究実績の概要 |
2016年度に得られた研究成果は、大略次の三点にまとめられる。 第一に、東京大学法学部法制史資料室所蔵史料の調査整理について。前年度までに得られた見通しを踏まえ、複合的なクラスター構造を想定しつつ、史料群の構造の立体的把握へと方法的な検討を進めた。また、近世史料について細目録の作成作業を再開し一定の進捗を得た。その過程で、従来必ずしも十分に利用されてこなかった重要な史料群の所在を(再)確認することになった。また、補修の必要なものをピックアップして補修計画の策定に着手、他の研究プロジェクトと連動する形で試行的に史料補修を実施した。 第二に、九州大学法学部法制史資料室所蔵史料群の整理調査について一定の進捗を得た。昭和初年の九州帝国大学における史料収集の経緯の一端が明らかになり、東京大学法学部法制史資料室所蔵史料群の構造を理解する上でも重要な知見が得られた。この点にかかる調査研究の成果の一部は、研究分担者和仁かやによって「資料紹介「賛生館御沙汰書写」」(『九州大学附属図書館付設記録資料館ニューズレター』Vol.11、2017年3月)として公表され、別に掲げるいくつかの論文にも活用されている。 第三に、新出の伊藤博文関係資料を出発点とした「朝鮮京城における日本人社会形成過程の一側面」のコンテンツ化の準備を進め、およその構成を決めたうえで、専門技術者の協力を得て、素材となるデータや画像の収集・採録を行なった。なお、この主題については、研究代表者新田一郎が法制史学会東京部会(於:早稲田大学、2016年11月26日)において「京城天真楼遺聞version2.01」として口頭報告を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度は、本研究の3年目にあたる。史料整理調査については、史料群の構造の予想以上の複雑さなどから、前年度までに遅れを生じ計画の見直しを余儀なくされていたが、後発の九州大学所蔵史料の整理・調査の作業は比較的順調に進捗し、一部について成果を公表することができ、また法制史研究への応用的成果もあがりはじめている。そこから、東京大学所蔵史料群の構造を解析する上で重要な示唆を得たこともあり、いったん中断していた東京大学所蔵史料についても、年度後半には態勢を整えて調査整理を再開し、所期の進度を取り戻すべく努めている。しかし、整理調査・目録作成作業の遅れがWEBコンテンツ化の素材選定作業など他の工程に影響し、研究計画全体としてみれば、当初計画よりもなお若干の遅れを残している。 WEBコンテンツ化については、新出の伊藤博文関係資料を軸とした調査研究の結果、視覚的なコンテンツ化に適合的と思われる素材を得たため、これをパイロット的な試作に用いることとし、素材を整理して基幹的なシナリオを用意するところまで進捗した。現在、コンテンツの視覚化へ向けて、技術面での研究協力者との間で相談と調整を進めており、この素材については、おおむね順調に進捗しているものと考えている。この間、東京大学法学部法制史資料室所蔵史料のWEBコンテンツ化へ向けた作業は、素材とする史料群の候補をいくつか仮置きした段階で、いったんペンディングとしている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に現在進行中の作業を継続するが、重点を少し移すところがある。 まず、コンテンツ化に関しては、比較的ストーリー化しやすくコンテンツ化になじむと思われる、伊藤博文関係資料を中心とした素材を用いた試作を優先する。研究代表者新田一郎が中心となって構成した素材に基づき、研究分担者和仁かやが、専門技術者の協力を得てコンテンツ化へ向けた作業にあたる。これをパイロット作業としてコンテンツ化の技法的なモデルを構築し、本研究計画の中心的な主題である「近世史料群のコンテンツ化」の方針を具体化する予定である。 東京大学法学部法制史資料室所蔵史料について、クラスターの構造的な特徴に留意しつつ、近世史料群を中心に細目録作成を進めるとともに、補修の必要な史料をピックアップし、優先度の高いものについては可能な手当を講じる。これと並行して、近代初期の外交関係史料群、近代初期の法学関係史料群、また近世から近代へと連続的に蓄積形成された史料群など、史料群の内容的な特質に応じて、日本近世史や近代政治外交史など各分野の専門研究者らと連携を図りつつ、史料の整理評価を進め、WEBコンテンツ化の候補となりうる具体的な素材の選定を進める。 上記史料群の構造的把握を進める上では、九州大学法学部法制史資料室所蔵史料との比較研究が重要な意味を持つことになるが、九大史料の保管環境については若干の配慮を要することが想定されている。上述のコンテンツ化作業の分担計画と併せ鑑みて、2017年度については研究費の配分割合を見直す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一に、試行的なコンテンツ構成のための準備作業が当初想定よりも遷延し、技術的な作業が次年度に繰越となったこと。第二に、史料調査の過程で保存利用のために手当を要する史料が発見され、次年度にかけてそのための計画を策定する必要が生じたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用の必要が生じた事情に即して早期に計画を執行する。
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