研究課題/領域番号 |
26380002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 哲志 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50401013)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フランス法 / 比較法 / 贈与 / 家族財産法 / 夫婦財産制 / 法人 / 財団 |
研究実績の概要 |
今年度の研究実績は以下の3点から成る。第一に、《目標2:家族内贈与の実態解明》に関連して、2015年のフランスの立法を扱う論考を公表した。家族内贈与の清算を意味する離婚時の夫婦財産の分割という主題を、実体法・手続法の両面から深化させることができた。 第二に、本研究の終極的課題である《目標3:贈与法を通じた日仏社会比較》の実践として、二つの研究活動を挙げることができる。(1)気鋭の家族財産法研究者であるソフィー・ゴドゥメ教授(パリ第2大学)の招聘を機会として小規模の研究会を組織した。2001年・2006年改正後のフランス相続法の現況、及び、我が国の相続法改正論議について、長時間の意見交換を行った(なお招聘予算は本研究とは別の枠組みによるが、研究会に関しては本研究より支出した)。次年度に予定されている講演翻訳の公表の際に成果を反映する。(2)高齢化がもたらす法的・社会的リスクをテーマとする国際学会(2018年3月22日・23日於ポワチエ大学)に参加し、民法上の対応を論ずる共同報告を行った。これまで十分な検討を施してこなかった介護等の無償サーヴィスにつき、これを家族内贈与の一形態として分析する手がかりを得ることができた。フランス語での成果を次年度に公表する。 第三に、本研究の発展的課題として、レモン・サレイユの法人論、とりわけその財団論を、1905年の政教分離法への対応という観点から再検討する論考を著した。本研究との関連度は一見したところでは必ずしも高くないが、教会が組織する慈善活動、及び、その原資となる財産の拠出もまた贈与法が扱うべき課題であり、本研究の射程の一般化に寄与する成果として特筆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も複数の研究成果が公にされており、本研究が掲げる具体的目標2及び3については着実に実施されているとの評価が可能である。しかし、他の研究活動を優先せざるをえなかったこと、また、出版計画自体が遅延したことにより、本研究の最終成果とすべき相続財産の先渡しとしての贈与に関する論考を公にしえていない。この論考には《目標1:贈与契約史の再構成》に関する成果も反映される予定であり、研究遂行の遅れとして認識されるべきである。これを補うべく、研究期間の延長を申請し、承認を得た。 なお付言すれば、上述の国際学会参加前に、研究協力者との意見交換、及び、目標1に関する史料の補充を行なうことができた。最終成果の取りまとめに向けた作業は遅滞なく遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
延長された期間を十全に活用するべく、まずは年度前半の早い段階で、最終成果たる論考の執筆を終える予定である。他方、5月末にカナダで開催される国際学会(アンリカピタン協会年次研究大会)においてナショナル・レポーターを務めることが決まっている。ここでは成年後見制度を担当するが、前年度の国際学会報告を機に分析を深めた家族内の無償サーヴィスの問題を取り込むこととし、本研究の目標2・3に関する成果を豊富化する。 その上で、本研究課題の一層の発展を企図して実施される科研費・国際共同研究加速基金への接続を意識して、既に開始した射程の一般化(法人論に関して前述)を確実なものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
「研究実績の概要」に記した国際学会参加につき、幸いにも旅費の一部(航空券代・宿泊代)が主催機関の負担とされたため、残余が生じた。これを活用して学会前に意見交換・資料収集を行なったが、そのすべてを執行することは叶わなかった(なお、学会及び他の海外での用務ののち、本年4月にも数日間フランスに滞在し、その費用として一定額を支出済みである)。前述のとおり、最終成果たる論考の公表のために、研究期間の延長を申請し、承認を得た。残額は、当該論考の執筆の過程で必要となる文献の購入に宛てられるものとする。
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