未実施のままであったカナダでの訪問調査を、当初予定のアルバータ州エドモントン市の研究協力者が不在となったため、第二訪問先のトロント市のみで行った。カナダにおける調査は、司法アクセスの促進に関連したPublic Legal Education(いわゆる法教育に限定せず一般市民を対象とした、法的な問題に自発的に対処するための人権教育・啓蒙・支援活動)の活動主体としての「仲介者」に着目したものである。特に社会的包摂や多様性を重視するカナダにおいて、特に本研究テーマで「弱者」モデルとした「LGBT」当事者の司法アクセスについて、理論と実務の両面から調査することとし、具体的には民事紛争における司法アクセス問題に関する研究活動を行う研究者や研究機関への聞き取り調査と、司法アクセス支援活動の主体として当事者と直に接するNPO法人への聞き取り調査である。前者についてはヨーク大学オズグッドロースクールのT.ファーロー教授、同大学ウィンクラー紛争処理研究所ディレクター、NPO法人カナダ民事司法フォーラム運営責任者と面談した。後者についてはNPO法人Communitiy Legal Education Ontario及びNPO法人Ontario Justice Education Networkのそれぞれエグゼクティブ・ディレクターに対して聞き取り調査と関連資料の収集を行った。 また「LGBT」当事者とその家族が抱える問題を整理し問題解決行動の実態を調べるため、弁護士会で行っている「LGBT」当事者に特化した無料相談サービスや啓蒙活動について、自助グループ等との連携状況を含め、地元の弁護士会の担当者に対する聞き取り調査等を行った。さらに「仲介者」と位置付けられる24時間の電話相談サービスを提供する一般社団法人社会的包摂サポートセンターを再訪し、前回以降の活動状況についてフォローアップ調査を行った。
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