研究課題/領域番号 |
26380005
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神保 文夫 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20162828)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 京都町奉行所 / 評定所 / 吟味筋 / 出入筋 / 問答書 / 判例集 / 御仕置部類 / 江戸宿 |
研究実績の概要 |
本研究は、江戸幕府評定所留役や町奉行所与力など裁判実務を担う法曹的吏員が作成した裁判記録ないし判例集や法実務書等のいわゆる法曹法的記録類を史料として活用し、それらの分析に基づき、近世裁判制度の形成・発達史を可能な限り具体的に解明することを目的としている。研究計画初年度である本年度は、江戸幕府及び主として西日本地域の諸藩に重点を置き、各地の図書館・史料館等に架蔵される未公刊史料を調査収集する計画を立てていたので、当初の計画に従って史料の調査収集に努めた。初年度中に収集することができた近世裁判制度史関係史料は、マイクロフィルムからの印画約720コマ、電子複写約140枚、デジタルカメラ撮影約800コマ等にのぼり、ほかに江戸期の写本類67点、市販のマイクロフィルム22リール等を設備備品費により購入した。これらの収集史料の本格的な分析検討作業はおおむね第2年度以降に行う予定であるが、既にこれまでの暫定的な調査でも重要な史料をいくつか発見し、新知見を得ている。その主なものを示せば、第一に、従来知られるところが少ない京都町奉行所の吟味筋に関する問答書(天保九年)と判例若干(自天明三年至天保三年)を見出し、江戸時代中後期における同奉行所の裁判制度運用の一端を明らかにしたこと、第二に、伝存するものがきわめて少ない江戸時代前期の幕府評定所判例集の一つである「御仕置部類」系判例集の写本1点のほか、その一部を条文化したものと考えられる史料を新たに見出し、主として貞享・元禄期における幕府評定所の裁判機関としての活動実態の解明を進めたこと、第三に、幕府寺社奉行所に出訴した越後国魚沼郡百姓の出入日記(嘉永二年)により、白洲での審問の様子や江戸逗留中の訴訟当事者の生活、江戸宿の活動の一端など、幕末における出入筋の裁判の実態を明らかにしたことなどがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料調査旅行のための時間を当初予定していたほど十分に取ることができなかったが、できるだけ効率的な調査を心がけることにより、初年度に計画していた史料調査・収集はある程度達成することができた。収集した史料のうちとくに重要と思われるものについて釈文作成作業を進めており、近世の裁判制度とその運用実態について既にいくつかの新知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の研究実施計画に基づいて、初年度に引き続き第2年度も幕府法及び諸藩法に関する未公刊史料の調査収集を継続するともに、それらの分析・検討を進める。なお、初年度に購入した写本類のうち、奥野彦六博士旧蔵近世法制史料コレクションには江戸幕府の裁判制度に関する法実務書や訴訟事件の記録などが相当数含まれているが、図書館の受入登録手続に約8か月かかり、研究利用することが可能となったのはようやく平成27年3月下旬であったため、史料の検討・分析作業は研究計画第2年度の平成27年度中に行うこととしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ全額を使い切ったが、若干の端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の旅費に加えて使用する。
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