人工知能(AI)の発展が社会にもたらす影響につき、急速な技術進歩によってその意義が増し、社会的・国際的な検討課題として関心が強まっている状況を踏まえ、特に近代の法・政治システムの基礎となっている人格の自律性との関係から分析する作業を進めた。「理性的に決断する個人」というモデルはもはや採用しがたいという認知科学の主張、技術進化によって複雑な物を複雑なままに扱えるのであれば近代社会のような単純化を行なうべきでないとする複雑系科学からの主張を重視して調査・検討を行ない、総務省・AIネットワーク社会推進会議など学際的な検討の場を活用して研究を進めた。 研究の結果については複数の論文(有斐閣からの論文集掲載、弘文堂からの論文集掲載、論究ジュリスト掲載論文)のほか、国際シンポジウム「AI and Society」(2017年11月)、パーソナルデータ+α研究会シンポジウム「AI社会における『個人』とパーソナルデータ:近代とシンギュラリティのあいだで?」(2018年3月)などにおいて公表した。加えて、ドイツから刊行予定の論文集、日仏共同研究を元にSpringerから刊行予定の論文集に収録される予定の英語論文を執筆した(受理済み)。 研究にあたっては、自動車の自動運転において事故が発生した場合の責任分担のあり方などを例にした法学的な分析と、動物の権利論など法哲学・倫理学的な分析との関係を明らかにし、この問題の新たな意義と今後に向けた検討の視角を明らかにするよう務めた。
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