研究課題/領域番号 |
26380007
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安藤 馨 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (20431885)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 法概念論 / メタ倫理学 / 当為論 / 相対主義 |
研究実績の概要 |
本年度の研究によって明らかにされたことは概ね以下の通りである。(1)前年度までの研究結果に依拠しつつ、法概念論に於いて不同意問題が関連するその様態を更に正確に同定し、意味論的相対主義を含む諸理論がそれをどのように取り扱いうるかを明らかにした(特に不同意問題に対応して非自然主義的実在論と当為判断の動機付け内在主義を結合しようとする立場についてその原理的難点を明らかにした)。また得られた結果の一部を論文として公刊した。(2)当為判断に関して、それが言及し、或いは対象に対して述定する当為性が、意味論的相対主義がそうするような評価者に対してのみならず、行為者に対してもまた相対化されるべきであるということを明らかにした。具体的には、集合的当為に於ける構成員行為者の貢献を求める当為(集合的当為から派生する個人的当為)と、非集合的な個人的当為が、それぞれ別種の当為についてのものであって衝突し得ないものとして行為者単位に即して相対化されるべきである(またこれによって道徳的ディレンマのある重要なクラスが無効化されることになる)ことを明らかにした。また、得られた結果の一部を公刊した。(3)行為当為と事態当為の区別に依拠しつつ、法の当為性について分類的整理を行い、命令説を始めとする古典的法モデルが、それが個別化された法規範をどのような当為として(或いは非当為として)把握するかに対応して分類されることを明らかにした。これは法の行為指導性とその規範的正当化に関わる今後の作業の基礎となる研究成果であった。これについても、得られた結果の一部を論文として公表した(ただし出版情勢から未公刊であり28年度中の公刊が見込まれている)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の本研究課題に関わる新規申請時に、平成27年度以降に行われるべき作業として設定した3項目のうち、不同意問題の解明と、法規範の道徳的正当化の様態とそれによる法の道徳的限界の解明という2項目について、十分な進展が見られたことによる。特に後者については、刑罰と租税の規範論的相違という観点からスペイン後期スコラ学に遡る法思想史的研究成果が得られたことも大きく、順調(以上)に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に鑑みると、本研究課題の中心である意味論的相対主義についての研究を前年度から引き続いて継続研究しつつ、更に残された課題である「論理的決定論・神学的決定論」とルール懐疑主義の構造的類似性の解明――ある種の客観的事実が行為者の主観的事実によって決定される――について、今年度までの進展を基礎としつつ取り組み始める予定である。特に、論理的決定論については、特にその意味論的ないしモデル論的側面について本年度内に取り組み始めたところであるので、次年度以降はまずこの点を中心に研究を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として、予定した海外学会参加のための旅費支出が今年度は生じなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度にはフランス(リール)への海外学会出席を予定しているため、それに充当する予定である。
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