引き続き零細ながらも国内に所蔵のない資料を中心に基本資料を購入し、研究基盤の充実を図った。期間中に発表し得た論文としては「北洋政府期法典編纂機関の変遷について――法典編纂会・法律編査会・修訂法律館」(『法政研究』第83巻第3号・2016年)を執筆し、これまで明らかにされてこなかった中華民国北洋政府時期の法典編纂機関の動向についての知見を学界に提供することができた。また同論文の執筆につき必要となる資料調査を東京にて行った。科研費でも購入不可能なほど高額の大型資料については、必要な部分に限り相互貸借・複写等を行うことによって資料収集の経費削減に努め、北洋政府期の政府機関公文書や判決資料について効率的にこれを収集することができた。また前年度執筆した論文「中華民国諸法の欧米語への翻訳について――法律顧問・法学者とその活動」(『法政研究』第82巻第1号・2015年)について中国側からの要請を受けてアルバイトを用いて同論文を中国語訳し、2016年7月9、10日に清華大学において開催された「漢語法学論壇2016“来華外国人與近代中国法”国際学術研討会」の会議論文として投じ、会議当日の報告論文集として配布されたほか、現在論文集の出版が中国において計画され、作業が進められている。また現在執筆中の論考としては、過去公表した人物研究データベースの更新の意味合いも含め、中国・台湾地域からの問い合わせの多かった、清朝末期の近代的法典編纂活動に際して法律顧問として招聘された岡田朝太郎の欧州留学時代の動向に関する小論を『法政研究』に投稿した。さらに引き続き中華民国北洋政府時期の治外法権撤廃運動における近代的法典編纂活動の評価に関する論考を執筆中である。これらはともに刊行後程なくPDF化され、大学のリポジトリを通じてインターネット上に公開される予定である。
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