研究課題/領域番号 |
26380016
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
瀧川 裕英 立教大学, 法学部, 教授 (50251434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 政治的責務 / 遵法義務 / 法的状態 / 自然状態 / 刑罰 / 応報 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、法に従う義務である遵法義務を、自然状態と対比される法的状態を構築する義務として位置づけた上で、法的状態の根本的な契機を理論的に解明し、法的状態を構築する義務の正当化根拠を探求することにある。この目的を達成するため、平成27年度には、第一に、平成26年度に行った政治的責務に関する研究を洗練させ、国際学会において報告するとともに英語論文化し、第二に、法的状態を実現する義務の根拠と含意を検討し、第三に、法的状態を実現する義務と刑罰の関係について考察した。 1 平成27年7月にワシントンDC(米国)で開催された法哲学・社会哲学国際学会連合の世界大会において、政治的責務と政治的正統性に関するスペシャル・ワークショップを企画・開催し、「政治的責務と人間の可死性」と題する報告を行った。この報告原稿を拡張した英語論文が刊行予定である。 2 政治的責務の正当化根拠として、法的状態を実現する義務について検討を重ね、その義務の根拠がどこにあるか、その義務が成立するための前提は何か、その義務がいかなる構造をしているか、その義務を果たすためにはどうすればよいか、その義務が結果的に何を要求するかについて洞察を得た。 3 法的状態を実現する義務は、犯罪に対してどのような対処を要求するか、特に刑罰はどのように正当化されうるかを検討した。平成27年11月に開催された日本法哲学会・学術大会において、統一テーマ「応報の行方」に関する大会委員長を務め、総括的な研究報告を行った。特に、応報という観念が今後いかなる意義を持ちうるのかについて考察を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、2つの研究作業を行い、成果報告を行うことを予定していた。 研究作業予定の第一は、平成26年度に行った政治的責務に関する研究を洗練させ、英語論文化して国際学会において報告することである。これについては、平成27年7月にワシントンDC(米国)で開催された法哲学・社会哲学国際学会連合の世界大会において、政治的責務と政治的正統性に関するスペシャル・ワークショップを企画・開催して報告を行うと共に、そこでの批判的討議を通じて完成した論文が刊行予定である。 研究作業予定の第二は、法的状態における匡正的正義の位置づけを検討することである。これについては、平成27年11月に沖縄で開催された日本法哲学会学術大会において、統一テーマの責任者として法的状態を達成するための刑罰の役割に関する報告を行うと共に、そこでの批判的討議を通じて完成した論文が刊行予定である。 以上のように、研究計画における予定を順調に達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度、平成27年度は研究計画に従って、順調に研究を推進することが可能であった。そのため、平成28年度についても、研究計画に従って研究を推進していくことにする。主として、これまでの研究で得た知見をもとに、政治的責務と遵法義務の相関関係について更なる理論的深化を図りながら、本研究の成果全体をまとめ公表することに尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書の精算処理が事務的に間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は、当初の研究計画に従って使用していく。主たる使途としては、関連文献の収集と成果発表の準備作業を予定している。
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